【火】 001:白火取

陰陽五行50題

儚げに飛ぶ、白い羽。
夜空に淡い光を彩りながら
一体何処迄行くのだろう。

「あれは…?」
「『シロヒトリ』って名前の虫だ」
「虫…」
「あぁ。蛾の種類だよ」

答えるのはいつもタラーク。
物知りなのは、旅慣れてるからか
女神が教えてくれるからか。

「弱々しく飛ぶんだね」
「そうでもないさ」
「?」
「自然の生き物は
 見た目以上に根性が有るからな。
 弱々しく感じるのは
 人間側の勝手な見方だ」
「…そうかも、知れない」

宛ての無い旅を続けている。
隣で笑顔を浮かべるアークを道連れに
旅を強要させた負い目が
そう見せているのかも知れない。

「迷いは誰にでも有るさ。
 そう、クヨクヨするなって」

タラークにも俺の動揺は伝わっているのか、
彼は俺の髪をグシャグシャと撫でる。

「綺麗な髪だな。
 光に透すと淡い緑色になる」
「…そう?」
「あぁ」

彼はふと笑みを浮かべた。

「自信持てよ、魔法使いさん」

言いたかった言葉はそれかも知れない。
俺は漸く、微笑を浮かべた。
Home Index ←Back Next→