「何だ、ユージ?」
「…暇だな」
「あぁ、暇だな」
「何か、こう…さ。
派手な事でも起きないかね」
「派手な事? パーティーとか」
「そうそう、パーティー!
チョット人相の悪い奴が好きそうな
硝煙の匂いとか満載で」
「際どい恰好のお姉ちゃんがゴロゴロ居て」
「そうそう! 最高だろ?」
「そうだな。で、俺達が参上する、と」
「呼ばれても居ないのに主賓の顔してな」
「良いんだよ。直ぐに俺達が主役になるんだから」
「流石はタカ。自己評価の高い男!」
「いやいや、褒めないでくれたまえユージ君」
「ねぇ、いい加減出て行ってくんない?
その車、少年課のパトロールで使うんだから」
男は30代から真価が問われるんだとはよく言ったもんだ。
昔の人はつくづく善い言葉を残している。
丁度脂の乗った食べ頃の年代。仕事も前線でバリバリ熟す。
今が丁度、そんな時期だ。
鷹山 敏樹、30歳。大下 勇次、同じく30歳。
二人の初対面は或る意味最悪だった。
互いに「此奴とは息が合わない」と断言する程。
特に鷹山の毛嫌い具合が顕著であり
元々胃痛持ちだった近藤課長は
毎日胃薬を手放せない状態だった。
それがと或る事件を契機に意気投合し
今ではそれが当たり前の様に二人一緒に行動する様になる。
近藤課長の胃痛も少しは和らぐかと思われたが、
火と油が一緒になればどうなるかは誰もが考え付く所。
結局、近藤課長の胃薬の量が増えただけで今日に至る。
「鷹山、大下。お前達の給料から
私の線香代を差っ引いておくからな!」
「何て事言い出すんですか、課長?」
「そうですよ、課長。俺達程、
課長の事を考えてる部下は居ませんって」
「私の事を考えてるってんなら
どうして毎回毎回県警と揉め事を起こすんだ?!」
「俺達は別に揉め事なんて起こしてませんよ。
なぁ、ユージ?」
「そうそう。県警が俺達に絡んでくるんですもん」
「お前達が県警の管轄に迄
首突っ込んで荒らすからだろうが!!」
「そいつは一寸心外だなぁ~。
県警が俺達の縄張りを荒らしてるんですって」
大下は鷹山の言葉に続こうとしたが、
流石に目の前の近藤課長の顔色の悪さに気付き
肘を使って合図を送る。
『この辺で止めておこう』
状況判断に於いては大下の方が一日の長がある。
この点は鷹山も素直に認めており、
彼の判断には基本的に素直に従っている。
「では課長、我々もパトロールに勤しんでまいります!」
おどけた口調で敬礼をし、大下はそそくさとその場を後にした。
全く同じポーズで一礼すると、鷹山もそれに続く。
「全く彼奴等ときたら…」
残された近藤課長は溜息を吐くほかなかった。