Zulassung

様々な出来事を体験し
漸く入学する事が出来た。
学業に専念すると云う大義名分を得て
寮で暮らす事も決めた。

兄さんはやはりギリギリまで
俺の独立を渋っていたけれど、
最後は俺の熱意と
真田さんの説得で押し切られる形となった。

少ない荷物を運び入れ、ダラダラと整理していたら
誰かが扉をノックしてきた。

この部屋は相部屋。
そして、同室者の荷物は既に片付けてある。
この部屋のもう一人の主が帰って来たに違いない。
俺はそう判断した。

「どうぞ」

扉を開けようともせず、
寧ろ背を向けたまま俺は返事だけする。

「え…っと、君が古代君?」

入って来たのは俺より少し背の高い
短髪の少年だった。
顔立ちは整っているが、
少し大きめの瞳がまだ幼さを残している。
この分だと…同い年の15歳だろう。

「あれ? 違った?」
「…そうだよ」
「そうか! 安心した…」
「…君は?」
「あ、紹介がまだだったね。御免。
 今日から君のルームメートになる島 大介だ」

彼こそが、後の俺の人生で多大な影響を与える存在。
そう、島 大介との初めての出会いはこの部屋だった。
今でも…よく覚えている。

「宜しくな、古代君!」

島はそう言うと笑顔で右手を差し出して来る。
それの示す意味、握手を求められている。
その時の俺は…有ろう事か、
差し出された右手を乱暴に払ってしまったのだ。

この時見せた島の驚いた表情は
大人になってからも忘れられずに居る。
悔やんでも悔やみ切れない、拙い対応。

怒られると思った。
訓練学校に入学してくる奴等は
基本的に血の気が多い、と
兄さん達から聞いていたからだ。
パンチの2〜3発は覚悟していた。

しかし、島は違った。

「あ、御免な…」

謝った来たのは彼の方だった。
悪いのは完全に俺の方なのに。

「忙しくしてる最中に
 邪魔しちゃったもんな…」
「いや、俺は別に…」
「お詫びに手伝うよ」
「え?」
「遠慮しなくても良いって。
 何処に何を片付ければ良いのか
 教えてくれる?」
「う…うん……」

今度驚いたのは俺の方だった。
更に驚く事に
島はとても要領が良いのか、
俺が間誤付いていたアレだけの荷物を
ものの数十分で綺麗に整理してしまったのだ。

* * * * * *

入学式の後、割り当てられたクラスへ。

1-F。

それが俺の所属クラスだ。
偶然なのか、島も一緒だった。

「良かった。古代君と同じクラスで」

そう言って微笑む島の表情は
やはり【戦士】とは大きく掛け離れた物に感じる。

「古代君…?」

俺を呼び掛けるその声や言い方。
不思議と嫌悪感は無く
寧ろ何とも表現し難い【懐かしさ】が
胸一杯に広がっていた。
もしかして俺は…彼を知っている、のか?

「…古代君?」
「古代」
「…え?」
「古代、で良いよ」
「…本当に?」
「ルームメートだからな。
 俺もお前の事は【島】って呼ぶ」
「解ったよ、古代!」

やはり島は優しい微笑を浮かべながら
俺をそっと見つめ返していた。

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SITE UP・2010.07.11 ©Space Matrix

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