Vertrauliche Angebot

火星基地に派遣される学生は
相当成績が優秀でないと駄目らしい。
謂わば、若くしてエリートと成るべき素材。
ここ数年は見送られて来た基地派遣隊員に
自分と古代が推薦されたのは…
他ならぬ土方教官の働き掛けであった。

古代の成績は…実技こそ優れてはいたが
航海学や宇宙物理学は相当苦戦していたらしく
派遣隊員の水域としては
かなり危うい物であったらしい。

しかし、教官は古代の覚悟を知っている。
このまま戦闘班に送り出したとしても
基本的に新人戦士は末端職に就かされるので
思い通りの働きが出来る訳ではないのだ。

【古代 守の弟】と云う色眼鏡を抜きにしても
土方教官は古代の資質を高く買っていた。
それは、俺から見てもよく理解出来る。
才有る者を埋もれさせたくはない。
教官の親心が、この派遣を実現させたのだ。

無論、俺も一役買っている。
正直言えば、心置ける奴と組みたかった。
俺の派遣はかなり前から決まっていた事なので
後はパートナーを誰にするか
と云う段階だったのだ。

通常は一年とされる派遣期間だが
状況によっては伸びる事もある。
逆に短縮される事もある。
上層部の動きに合わせて臨機応変に対応出来るか、
それもこの派遣で確認されるのだ。

俺の思いとは別の方向に進む未来。
皮肉なものだと、目を閉じる。

今の時代、船に乗る為には
軍人に成るしかない。
現実から目を背けて夢を追う事も出来ない時代。
そんな時代に、俺達は生きている。
ならば、どんな手段を用いても
夢に近付くしかないと思った。

【アイツ】に会う為に。
俺の望みは…それだけ。
それだけの為に、俺は【船長】を目指し…
今は、此処に居るのだ。

「…ま」
「……」
「島?」
「…ん?」
「手…止まってるけど?」
「あ? あぁ…」

そう言えば、今は
部屋を片付けている所だったな。
しかし俺に声を掛けて来た張本人は
箱を前にして腕組みしたまま。
片付けは少しも成長していないのか。

「お前の方こそ、片付けろよ」
「もう疲れちゃったよ。
 少し休憩しないか?」
「サボる気満々だな」
「そうじゃなくて…
 あぁ、そうだ!
 お前の淹れてくれる紅茶が飲みたい!」
「紅茶?」
「そう! レモンティ!!」
「…その箱を片付けたらな」
「解った!!」

目的が出来ると古代の動きは速い。
そんな彼の仕草を見つめながら
何処となく次郎と似たものを感じ取り
俺は苦笑を浮かべていた。
彼とならば、大丈夫だろう。
何処に配属されたとしても…。

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