此処での生活は
寮生活と根本的に違う。
覚悟はしていたつもりだったが
実際に経験する物はなかなかハードで
最初の一ヶ月は正直言って
心休まる時間が
無かったと言っても良い。
俺はらしくも無い位に
心に余裕が無かったから
随分と古代に当たってしまったし、
アイツには嫌な思いをさせてしまったと
密かに反省はしている。
こうしてこの環境に置かれる事で
俺は自分の小ささを実感した。
偉そうに御託を並べても
結果が付いてこないのだ。
これは非常に厳しい現実である。
実際に軍に配属されたとして
実戦で通用するのだろうか、と
妙に不安になったりもするのだ。
此処まで考えて、ふとペンが止まる。
俺が、戦場に…。
今迄は随分と漠然とした未来展望。
だが、実際に先輩は戦地に向かい
既に実戦を経験している。
そして、中には運悪く…。
「ひっ!!」
一瞬脳裏に過ぎった表情に
俺は恐怖から思わず奇声を発した。
慌てて机を叩き、飛び上がる。
何故、思い出してしまったのか。
忘れてしまいたい、心の傷。
時間が経てば少しは癒えると
思っていたのに…
実際は更に傷口が広がり、
グズグズと化膿している。
俺は一生逃げられはしない。
きっと、ずっと付いて回る。
体が自然と震え出す。
何よりも刻み込まれた恐怖が
俺の五感を全て支配し、
氷像の様に凍らせてしまう。
「助けてくれ」と叫べば
この苦しみから逃れられるのだろうか?
「許してくれ」と請えば
未来は安泰になるのだろうか?
そんな事は在り得ない。
俺を苦しめ、傷付けた本人が
既にこの世に居ないとしても…
結局、俺は自身の過去を収めた記録を
この手に取り返せなかったのだから…。
自分自身で消去出来なかった以上、
きっとまだ…【記録】は一人歩きしている。
俺の【記憶】とは別の道を。
自分自身を守りたいのならば、
強くなるしかない。
物理的にだけでなく、精神的にも。
そして…俺はまだまだ弱い。
そう、心が弱いのだ。
強くならなければ、誰も守れない。
自分の所為で、自分の無力さが
誰かを傷付けてしまうかも知れない。
「古代……」
俺は、古代を守りたい。
いや…其処まで大それた事じゃなくても、
せめて古代の足を引っ張らない様に
自分の身位は守れる様にならなければ。
「こんな苦しみは…俺だけで良い。
古代には、苦しんで欲しくない。
もう、これ以上は……」
古代が過去に、どんな目に遭ったのかは
あくまでも推察に過ぎないのだが。
もしもそれが、本当に起こったのだとしたら…
古代の受けた心の傷は、きっと俺よりも深い。
だから、ではないが…
せめて力にだけは…なりたかった。 |