Allein

基地の規模は決して大きくは無いものの、
それでも島と二人きりでは
充分過ぎる程の広さだった。

調査ルーム、計測室、通信室、
それに居住スペース。
幾ら二人での作業と云っても
分担しなければならない場合も多く、
日によっては擦れ違いだけ、と
云う事も有る。

もう少し楽しめるかも、と
思っていた俺にとっては
若干…歯痒い現実である。

男二人だけの生活で
それでも休憩時間に
茶で寛げたりするのは
偏(ひとえ)に島の御蔭でもあるのだが…。

「…どうしたんだ、古代?」
「「いや、何でも無い。
 少し考え事をしていたんだ」
「そうか…。休憩中位は
 任務から頭を切り離しておけよ。
 疲れるだけだし」
「まさかお前からそう云う発言が
 出るとは思わなかったよ、島!」
「…俺は本気で心配してるんだが」

島が心配してくれているのは
とても痛感している。
時代を選べるのであれば…
島には戦士になど、
成って欲しくは無いものだ。

ふと視線を移動させ、島の横顔を見つめる。
訓練学校入学時に再会した頃と比べたら
確かに身長も伸びてるし、
逞しくもなっている。
顔つきも精悍に、凛々しくはなった。

だが、それでも幼い頃からの優しげな眼差しは
少しも変わらないままだ。
変わらずにいられる事に感謝し、
尊敬はしている。

しかし…この『男とも女とも呼ばない』
中性的な微笑の持ち主に降りかかる
厄災を思うと…素直に喜べない。

「古代」

島が心配そうな目で此方を見ている。
どうしてなんだろう。
胸の奥が痛い、苦しい…。

「古代?」
「ん…少し疲れてるのかな?」
「ほら、無理をするから。
 熱は出てるのか?」
「其処迄じゃないよ」
「いや、油断は禁物だ。
 お前はよく風邪を引いたら
 そこから気管支炎に発展させてたし…」
「幾つの時の話だよ」
「今は俺達しか居ないんだから
 気管支炎なんか患ったら
 それこそ生命に関わるぞ!
 体温計取って来るから待ってろ」
「…はーい」

言い出したら聞かない頑固の所は
年々酷くなってる気がする。
自分がこうだと認識したら
他人の話なんて録に聞かないからな。

こんなに俺の事を心配してくれるのは
俺が倒れたりなんかしたら
自分の負担が増えるから、なんだろうか。
訓練学校での寮生活を経験し
一緒に暮らす事に何の不安も無い筈だが。
あの頃とハッキリ違う事は…
今この基地には俺達しか居ないと云う事。
頼れるべき存在は他に居ない。

だからこそ頼られたい筈なのに…。

苛立ちを誤魔化すように
俺はカップに残っている紅茶を
一気に咽喉へ流し込んだ。

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SITE UP・2012.3.17 ©Space Matrix

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