調査。鍛錬。
短調なルーチンを繰り返すだけの毎日。
新たな発見が有る訳でもなく
面白い変化が生じる訳でもない。
体は少しずつこの環境に順応し
やがては慣れてしまった。
成長期真っ只中の若い肉体は
このルーチン程度では
体力を発散し切れない。
この状態で困ってしまうのは
日中の作業中ではない。
寧ろ夜中であった。
つまり…眠れないのである。
基地に赴任して3ヶ月間は
慣れぬ事の連続で心身共に疲れ果て、
就寝時間が来れば
ベッドに体を沈めるだけで
自然と爆眠出来ていたのである。
眠れないと云うのは正直キツイ。
肉体的以上に、精神的に厳しい。
古代は就寝時間ギリギリまで
ウエイトトレーニングに勤しみ、
島は既に読み漁ってしまっている書庫から
適当に本を選んでは読書に耽る。
互いに何とか苦心しながらも
就寝に向けて努力をしていた。
* * * * * *
実習期間も半年を越えた或る日の晩。
古代は眠っている筈の島の姿が
ベッドから忽然と消えている事に気が付いた。
何処へ行ってしまったのだろう。
こんな時間に、独りきりで…。
幾らあの頃とは違うとは言え、
やはり不安は拭えないのだ。
古代はもう一枚上着を羽織ると
そっとベッドから抜け出し、
島の姿を捜し始めた。
食堂、書庫、倉庫、計測室に通信室。
思い当たる所は全て隈なく捜した。
しかし、肝心の島の姿は何処にも無く
古代はより一層の不安に駆られた。
『あいつ…何処かで倒れてるんじゃないか?
俺よりも健康管理は気にしているけれど…
それでも俺以上に動き回ってるし……』
もう一度最初から捜そうと思い、
古代は懐中電灯を握り締めなおした。
すると。
カタン
「…部屋?」
確かに、部屋の方から音がする。
シャワールームの辺りからだ。
火星基地ではユニットバスになっており
脱水所が入口の手前に設定されている。
「何だ…トイレだったのか。
あぁ…驚いた……」
一応所在は判明した。
古代は安堵の息を吐き、ベッドに体を潜らせる。
漸くコレで一眠り出来そうだ。
そう楽観視していたのだが。
「…長いな」
用足しにしてはなかなか終わる気配が無い。
よく見れば浴室の灯は消されており
だからこそ古代も初見で見落とした位だ。
「何で灯を消して…?」
理解不能だった。
そしてやはり、中で倒れているのでは?と
不安になった古代は
足音を立てない様にそっと浴室に近付いた。
『…気配は、有るな』
かすかに聞こえてくるのは
何処か苦しそうな、それでいて何とも言えない
荒っぽい呼吸音のみ。
不規則に、それだけが聞こえてくるのだった。 |