島は知らない。
俺が彼奴の秘められた時間を見た事を。
そんな彼奴を想いながら
自分も又 同様に行為に浸っている事を。
彼奴は浴室で、俺はベッドの中で。
重なり合えれば楽なのに。
それが出来ない。
…怖いんだ。
委ねれば楽なのに。
幸せになれる筈なのに。
お前に拒まれるのが怖くて
お前に嫌われたくなくて。
知らぬ振りを続ければ
お前は何も気付かないまま
俺に優しく微笑みかけてくれるから。
俺は、卑怯者だ。
結局、俺はお前を守れていない。
それどころか、お前を苦しめて
見て見ぬ振りを続けてる。
保身の為に。
それを人は【卑怯】と呼ぶ。
俺はこんな人間だったのか。
自分の底の浅さに、心底呆れる。
口では幾らでも偉そうに言える。
だが行動に示さなければ
只の負け犬の遠吠えに過ぎない。
「どうした? 古代」
不意に声を掛けられ
俺は慌ててデータ用のデバイスプレートを
床に落としそうになった。
「おい! 落とすなよっ!!」
「わ…解ってる…」
「それ、落として破損させたら
半年分のデータがオジャンだぞ。
本当に解ってるのか?」
「…解ってるよ、五月蝿いなぁ」
「…なら、気を付けろよ」
語尾に怒りを感じる。
島の奴、流石に機嫌を損ねたか。
俺も餓鬼みたいにムキになって
反論等しなければ良かった。
島の言った事が正しいのに。
「あ、島…」
俺の声に気付かないまま
島は奥の測定器へと向かってしまった。
手を伸ばせば背中に触れる事も出来た筈。
だけど、遠かった。
島の背中が、実際よりも
うんと遠くに感じてしまった。
* * * * * *
此処最近、奇妙な電波が届く。
戦況は日々、悪化の一途を辿り
この火星基地も存亡が怪しくなっていた。
「…測定値はこれ、か。
段々乱れが酷くなって来たな」
「島、測定出たか?」
「あぁ。この通り。酷いもんだ」
「…そう、か」
数値を目で追いながら
古代は思わず溜息を吐いていた。
「地球防衛軍はどう出るつもりなんだろう?」
「…さぁ。こっちには通知も来ないからな」
「俺達、このまま……」
古代がそう言い掛けた時だった。
ドンッ
大きく基地が揺れる。
「な、何だ?」
「地震? うわっ!」
『地球司令部より司令。
墜落した飛行物体の正体を確認せよ』
「今のだぜ、きっと」
「冥王星の付近で戦闘中なんだ。
どっちかの船が落ちたんじゃないのか?
…それっ」
「それにしちゃ…
冥王星からは距離が有り過ぎるぜ?」
古代と島は宇宙服に身を包むと
戦闘機に乗って目的ポイントへと向かった。
其処で待つ【未来】を、大きなうねりを
この時の2人はまだ、知る由も無かった。 |