島の告白は、正直とても辛い内容だった。
騒動の発端は、野良猫の生命を救う為であり
一刻の猶予も無く、味方すら居ない孤独な戦いだった。
それでも怯まずに、彼は暴力に立ち向かった。
普段は自身の力を
無意識の内に押さえ込んでいるのだろう。
だが、幼き生命が奪われたと云う事実が
彼の【制御装置】を破壊に至らしめた。
7歳児とは思えない脅威の破壊力も
そう考えれば納得がいく。
常人の域を超えた間接と筋肉の行使をすれば
年齢差や体格差など関係無いのだから。
「島…」
「…古代、俺は……」
「お前は人を殺してなどいないよ」
「でも…俺は……」
「そんな簡単に人間は死なないさ。
それに…もしそうだとしたら
お前はもっと明確に覚えている筈だろう?」
「…そう、なのか……?」
「俺はお前を…信じているよ」
「古代……」
島は少しだけだが安堵の表情を浮かべた。
どれだけ辛かっただろう。
たった一人で、心の闇に立ち向かっていたのだから。
「島…俺も、お前に言わなきゃいけない事がある」
「…え?」
「実に恥ずかしい話なんだがな」
コイツになら話せると思った。
そして、知って欲しかった。
両親を喪った俺がどう云う経緯で此処迄来たのか。
あの人との…たった一度の【取引】を。
* * * * * *
飲み物は既に温度を失い、
部屋には重い沈黙の空気が流れている。
事実を告白した俺に安堵感は無く、
逆に不安が蘇ってきた。
島には、軽蔑されてしまっただろうか。
たった一度とは言え、醜い事実など
今の彼には酷だったかも知れない。
エゴでしかない。
俺のこの【告白】は。
「古代…」
「ん…?」
「辛かったんだな…。
その、俺がこんな事を言うのは
身の程知らずも甚だしいが……」
「島……」
「俺は…今の古代を、大切に思ってる」
島はそう言うと、優しい笑みを浮かべた。
男にしておくのは惜しい位の笑み。
本気でコイツが欲しいと思った。
誰にも渡したくないと切実に感じた。
「ダイちゃん……」
「え…?」
思わず洩れた独り言。
やはり、島は鋭く反応した。
「どうして、俺の…子供の頃の渾名……?」
「知ってるよ、お前の事は…。
ナガトで会った時からずっと
お前の事を想って来たんだから…」
「古代……?」
「俺は…あの時の【しゅしゅむ】、だよ」
「昆虫の好きな…しゅしゅ、む? お前が…?」
「そうだ…。覚えてくれていたんだな」
「当たり前だろう?!
俺だって一日たりとも忘れた事は無かった!
船長さんに成れば必ず会えるって信じてた!
だから俺…どんな事をしても船に乗るって……っ!!」
感極まる島をそっと抱き締め、
俺はそのまま彼の唇に
自身の唇を重ねた。
「好きだよ…島。
ずっとお前の事を…想っていた…」
「古代……」
「お前を、俺だけのものにしたい。
誰にも触れさせたくない。
好きだから…大介の事……」
「古代……」
「【進】と…呼んでくれ」
「…進」
「そうだ……」
再度口付けを交わし、抱き締める。
漸く、再会を果たせた。
もう二度と離さない。
もう二度と、苦しませはしない。
この、俺が…守り抜く。 |