「だから、聞いてなかったのか?」
部屋に戻ってきて開口一番
島は呆れた表情を浮かべてこう言った。
「ん? 何が?」
「…土方教官がお呼びだってさ」
「何時?」
「明日の放課後。
教官室に出頭せよ、って」
「何だよ、出頭って。
俺、最近は暴れたりしてねぇぞ!」
「お前だけじゃない。
…俺もだ」
「益々解らん…」
乱暴に鞄をベッドに投げ出すと
そのままドッカリ
古代は椅子に腰を下ろした。
「補習ったって…お前と一緒ってのがな」
「そりゃ、俺は補習受ける様な生徒じゃないから」
「悪う御座いましたね。
どうせ俺は航海学じゃ万年赤点だよ」
「俺が付いてなかったら落第決定だな、お前」
「感謝してるぜ、ダイちゃん!」
「…止せよ、その呼び方」
「何で?」
島は顔を赤面させている。
視線を微かに逸らし、言葉を続ける。
「格好が付かないだろう?
誰かに聞かれたら」
「聞く物好きも居ないと思うがな」
「判らないぜ。
俺達には敵が多いんだから」
「まぁ…なぁ〜」
とにかく目立つ二人組である。
勘違いした生徒に因縁を付けられる事も
他の生徒に比べればやはり多いのだ。
又 御丁寧に喧嘩を買う古代の性格も相俟って
上級生、下級生、同級生問わず
敵は確実に増えてしまっていた。
「味方も居るけどね」
「太田と相原じゃなぁ〜。
援護射撃にもならないじゃないか」
「喧嘩は俺達の責任!
そんな尻拭い迄させる気か?」
「いや…その……」
この剣幕である。
元々喧嘩は嫌いな島なのだから
これも仕方が無いと言えば仕方が無い。
『お前の事は俺が守ってやるって
ちゃんと決めたんだけどな…。
ダイちゃん、いや…大介って
年々逞しくなってるんだよな』
守り甲斐の無い相棒の成長に
時々苛立ちを隠せなくなる。
「一体何なんだろうな。
土方教官の出頭命令」
「俺に聞いても知らん」
「大介ぇ〜」
「知らんものは知らん!
明日、教官室に行けば判る事だ」
「そりゃまぁ、そうなんですけどね…」
古代はそう言いながら島の横顔を見ていた。
何処と無く落ち着きが無い。
巧く隠している気なのかも知れないが
動揺してる事位は古代だって見通せる。
『大介が此処迄動揺する事って…
間違っても成績の件じゃないよな。
だとすると…進路、か?』
そう考えると何となくだが納得がいく。
島はもしかすると
薄々感じているのかも知れない。
間も無く終わるのだ。
この共同生活が。
『だから…寂しくて荒れてるのかな?』
敢えて聞きはしなかったが、
古代は『自分もそうだ』と
心の中で呟いていた。 |