埃塗れになった体を清めようと
俺は浴室に入った。
俺が船長に成りたかったのは
どうしても会いたい奴が居たから。
そいつと再会する事が出来れば
もう、それで良かった。
何に執着する事もなく、
そいつと離れない距離を維持出来れば
俺は又、別の道を進む事も出来た。
進と出会う迄はそう考えていた。
彼の背負ってきた過去を知る迄は。
だけど、恐らく俺は船長を目指すだろう。
いや…そんな優しい言葉ではない。
俺の乗るであろう船は宇宙戦艦。
敵を滅ぼし、星を破壊する船。
殺戮し、破壊する為の艦を…
この俺が操舵する事になるのだ。
「……」
嘗ては考えられない事だった。
だってそうだろう。
俺が目指した船長は
青い空と海に堂々と浮かぶ
あの戦艦ナガトで出会った船長なのだから。
彼はまだ、船長を続けているんだろうか。
「…あれ?」
ふと、疑問を感じた。
5歳の時、進と出会った船はナガト。
【宇宙戦艦】ナガト、なのだ。
「……」
俺が目指す先に、あの人が存在していた。
彼も又 宇宙戦士として
あのナガトに乗り込んでいた事に
俺は今更ながら気が付いたのだ。
「そう…だったんだ。
あの人も、戦っていたんだ…」
今迄…気が付かなかった。
だってあの人は、本当に優しそうに
俺達を抱きしめ、微笑んでくれたから。
俺達を家族の許へと案内してくれた
あの時に繋いだ手の温もりと大きさを
俺は今だって鮮明に覚えている。
俺は、あの人を目指す事になるんだ。
今迄は手も届かなかった憧れの大人。
あんな人に成りたいと、思うしかなかった。
その人に一歩でも近付く為に
今日迄の俺が居たと云う事になるんだ。
そう思うと、急に寂しくなった。
俺は航海科を選ぶ。
そして航海長を目指す事になる。
土方教官からも言われた。
お前の腕なら、高みを目指せる…と。
だから俺は戦闘科には行かない。
進とは…離れ離れになるのだ。
解っていた。
解っていた筈だった。
でも、解っていたつもりだったのかも知れない。
単純に進む科が分かれるだけじゃない。
どちらも生きていれば再会も出来るだろうが…
進は激戦地に立つ身なのだ。
今生の別れを、意識せざるを得ない。
『進と、別れる』
改めて、俺達の立場の重さを感じ
打ち拉がれる思いがした。
「…確りしろ、島 大介」
俺は自分を叱責する。
鏡に映る自信無げな顔に水を引っ掛け
激しく両の頬を打った。
「こんな思い、こんな表情。
…進に、見せる訳にはいかないんだ。
アイツが安心して戦える様に
俺は笑顔で送り出さなきゃいけないんだ…」 |