Belästigung

ここ最近気に入らない事が増えて困る。

俺達の部屋の前に
毎日毎日ゴミを捨てて行く輩である。
寮長に話はつけて有るが
ちっとも収まる気配が無い。

直ぐにイライラする俺とは対照的に
島の奴は落ち着いている様子だった。
寮長や教官へ伝えたのも
本来は島の提案だったし、
アイツは俺なんかよりも
ずっと先を見つめている。

俺よりもずっと大人の筈のアイツの事を
何時からか…俺は心配する様になっていた。

* * * * * *

或る日、部屋の前に
捨てられた【物】を見つけた島は、
急に言葉を失ったかの様に
何も語らなくなってしまった。

毛布に包まり、怯えた目で
全身を激しく震わせている。

とても尋常には見えない怯え方。

丸一日、何も口に出来ず
ずっと震え続ける島を見ていると、
堪らなく胸が苦しくなって…
俺は思わず、コイツを抱き締めていた。

エスカレートする嫌がらせに
耐え切れなくなった訳じゃない。
俺ならともかく
島がそんな奴じゃない事は解っている。

「なぁ、島」
「……」
「あのまんまじゃ、
 兎が可哀想だもんな。
 墓、作ってやろうよ。俺達2人で」
「…古代」
「な、島」
「…うん」

消え入りそうな声ではあったが
確かに島はそう答えてくれた。

「有難うな、島。さぁ…行こうか」
「…うん」

* * * * * *

質素な墓ではあったが
何もしないよりは
遙かにマシだったろうと思っている。

只の自己満足かも知れない。
こんな事をした位で害を被った兎は
人間を許し等、してくれないかも知れない。

それでも…何かをしたかった。
何かしなければならないとすら、感じた。

黙祷を捧げる島の両目から
大粒の涙が引っ切り無しに零れ落ちている。

本当にコイツは優しい男であると、
優しい人間であると痛感すると共に、
どうして此処まで苦しまなければならないのか、
その理由は一体何であるのかを
俺は無性に知りたくなった。

島の事を、誰よりも知りたくなった。
彼の事を…彼の全てを、知っておきたいと
強く願う様になっていた。

「島」
「……」
「そろそろ部屋に戻ろうか」
「…うん」
「よし、じゃあ帰ろう!」

俺は自然と島の肩に腕を回し
そのままゆっくりと歩き始めた。

今は只、休ませてやりたかった。
ゆっくりと心と体を休めて、
全てはそれからだ。
島ならきっと答えてくれる。
そう、信じられた。

此処迄誰かを信じられるだなんて…
自分でも不思議な位に。

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SITE UP・2010.10.22 ©Space Matrix

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