部屋に戻り、手を洗ってから
俺は不慣れながらも
温かい飲み物を用意した。
いつもは島に任せっぱなしだったから
非常に段取りが悪い。
然も飲み物しか用意してなかったので
今更ながら口元が寂しくなる始末だ。
尤も…こんな状況で間食する程
俺も鈍感な性質ではないのだが。
部屋に戻っても、
やはり島は何も語ろうとはしなかった。
固く口を閉ざしたまま
ベッドに腰掛けて動かない。
辛うじて、マグカップを受け取っただけだ。
無理に聞き出したくは無かった。
アイツが話したくなったら
全てを聞けば良い。
焦る必要なんて無い。
そう考えていた。
「…古代」
「ん? 何だ、島」
「俺…人、殺した事がある…」
「?」
いきなりの告白に
俺は思わずマグカップを落としそうになった。
流石に【人殺し】と聞いて
平常心を保って居られる程の器ではないし、
其処まで無神経な訳でもない。
しかし、ならばこそ…
この告白は重要なのだ。
俺は気を取り直し、
腰を据えて話を聞く事にした。
何よりも、島の苦しみを
少しでも軽減させてやりたかったから。
「それ、何時の話だ?」
「7歳の…頃」
「相手は?」
「上級生だった…、から…
多分10歳位、かな…。
もしかすると…もう少し年上かも知れない…」
「人数は?」
「ハッキリとは覚えていないけど…
5人位は居た様な気がする……」
7歳の子供が、複数の年上相手に?
話の内容からすると、
島は一人で戦ったと推察出来る。
ならば尚更、この話は変だ。
やはりどうも、合点が行かない。
俺は更に情報を求めた。
「原因は…只の喧嘩、では
なさそうだよな」
「……」
「言いたくなければ、良いよ。
無理に話さなくても
俺は大丈夫だからさ」
「俺……」
「な、島」
「俺…お前だけには、話したい…。
お前には…聞いて欲しいんだ…」
「島…」
「頼む…古代……」
縋る様に俺を見つめてくる島の瞳は
いつもの元気さなど微塵も無く、
ただただ怯え、不安に駆られていた。
島は俺に救いを求めている。
ずっと一人で戦っていた恐怖を
こんな形で更に突き付けられて。
もう、限界なのだろう。
そして俺は不意に感じた。
やはりコイツは【ダイちゃん】なんだと。
5歳の時の出会い同様
今も島は俺を求め、助けを請うている。
きっとその為に俺は此処に居るんだ。
その震える手を取って、励ます為に。
島 大介と云う存在を、守る為に。
俺だけが出来る事。
俺にしか出来ない事…。 |