Form der Freundschaft

俺が拳を入れた左頬が醜く腫れ上がっている。
だが島は表情を変えず、
そのまま黙って俺を見つめている。

『…来るのか?』

そのまま、長く沈黙を守るが
島は一向に動かない。
俺も又、動く事が出来ない。

『島……』

半ば、祈る様な気持ちだった。
島とは戦いたくない。
それが、俺の率直な気持ちだったから。

「…古代」

返ってきた声は、予想に反して穏やかだった。

「島…?」
「有難う、古代…。
 約束通り、俺を止めてくれた」
「…当たり前だろう」

島は微笑んでいた。
顔は多少変形しているが
確かにその表情は
俺の良く知る島のものだった。

「正直、驚いたよ…。
 お前がこんなに強かったなんてな」
「…俺のは強さなんかじゃない。
 只の【凶器】だよ…」
「でもお前、ちゃんと寸前で止めてたぜ」
「?」
「その気があれば、息の根止められたんだろう?
 でもお前は、必死に自分で自分を抑えてた。
 俺はこの目で見てたんだから、間違いない」
「古代……」

出任せだとバレただろうか。
だが、真実を語る事だけが
島を守る術にはならないだろう。

彼が俺の言葉を信じて
自制する力を身に付ければ
それこそが本当の意味で
彼の為になるのだから。

俺はいつ何時も島の傍に居られる訳じゃない。
傍に居るのならば今回みたいに
全力で止める事も可能だが、
それが出来ない時の手段も講じておかなければ
結果的に島を苦しめるだけなのだ。

「有難う、古代」
「何言ってるんだ。友達だろう?」

島は静かに微笑んでいたが
瞬時に表情を強張らせると
何を思ったのか、俺を思い切り押し倒した。

「?!」

恐らく鉄の棒か何かだろう。
俺目掛けて振り下ろされたそれを
島は自分の体を盾にして
俺を守ってくれたのだ。

「調子に乗ってるんじゃねぇぞ、下級生がっ!!」
「島!」
「…大丈夫」

大丈夫、では無いだろう。
頭部から出血しているのだから
恐らくは何処かが切れた筈だ。

「島…折角お前が温情を出してくれたのにな」
「んだとぅ?!」
「俺、コイツをぶん殴りたくなった。
 良いよな、ボッコボコにしたって」

島は驚いた表情を浮かべていたが
俺はそんなのお構い無しに
鬱憤晴らし宜しく
そいつをサンドバックにした。

* * * * * *

相手を全て使い物にならない程
スクラップに近い状態まで叩きのめした。
寮長である加藤先輩の働きが無ければ
本来なら退学モノの大乱闘だった。

「毒を以って毒を制す、じゃないが…
 今回だけは多目に見てやる」

土方教官の説教もどこか温かみを感じ、
叱られていると云うのに
俺と島は顔を見合わせて微笑んでいた。

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SITE UP・2011.5.30 ©Space Matrix

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