最初の授業内容は
簡単な自己紹介と所信表明だった。
30人程のクラスメートの前で
自分自身を表現する。
正味2分程度の時間枠内で。
少しでも早く実戦に合った授業を受けたいと云うのに
全く以って無駄な時間の使い方をする。
無愛想に自己紹介を済ませ、
俺はつまらなそうに自席に着いた。
隣には静かに座っている。
「…緊張しなかった?」
「しないよ」
「そう……」
俺にとっては大した事ではないが、
島にとっては違うのだろうか。
どうして彼がこの学校にやって来たのか
それを知るには良い機会かも知れない。
「じゃあ次、島…か」
「はい」
緊張していると言っても
島は実に堂々としている様に見えた。
やがて教壇に立ち、律儀に一礼すると
彼はゆっくりとした口調で自己紹介を始めた。
「島 大介です。
地下都市中央中学出身です。
将来は【船長】を目指しています」
一瞬の静けさ。
その時俺の脳裏に蘇ったのは…
5歳のあの日、共に抱き合って泣いた男の子、
そう…ダイちゃんの姿だった。
ダイちゃん…。大ちゃん…。大介。島 大介。
もしかして彼が、あの…?
しかし、不愉快な笑い声が
俺を無理矢理現実へと引き戻した。
笑っていたのは生徒だけじゃない。
教師までが一緒になって
島を笑い者にしている。
彼は握り締めた手を震わせ、
怒りと恥ずかしさに涙を堪えている様だった。
こんな下賎な奴等が宇宙戦士を目指すだと?
たった一人の少年の大切な【志】を
笑いの種にしてしまう人間の屑が!
堪忍袋の尾が切れた。
俺は無言で思い切り自分の机を蹴り飛ばし、
殺意を篭めて周囲を睨み付けてやった。
黙れ。黙れ! 黙れッ!!
ダイちゃんは…島は、
俺との【約束】を守ってくれているのだ。
あの日と変わらぬまま、大切に。
そんな彼を笑い者にするなど…
俺が決して許しはしないっ!!
「ま…まぁ、良いでしょう。つ、次…」
罰が悪いとでも思ったか、
教師は慌てて島を席へと向かわせる。
彼は自分の席に着く前に
俺が見事に蹴り飛ばした机を
ゆっくりと戻しながら、
他の誰にも聴こえない程の小さな声で
「有難う」
と、呟いた。
その時に見せてくれた横顔は
とても穏やかで、胸がドキドキと高鳴る程に
綺麗な表情だった。
そう、ダイちゃんが見せてくれた笑顔と
全く同じ物だったのである。
あれから10年経過したと云うのに、
彼は彼のままだった。
俺とは違い、夢も目的も何もかもが
ダイちゃんのままで居てくれた事に
俺は心から感謝していた。 |