「どっちが古代だ?」
笑いながら近付いてくる気配。
酒と煙草の臭いがキツイ。
下らない事を聞くなと言いたい所だが
俺は律儀に名乗りを上げかけた。
そう、上げかけたのだ。
動作を止めた理由は唯一つ。
「島っ?!」
俺の横を疾風が通ったかの様に
島は群衆の中に飛び込んだのだ。
そして其処からのアクションは
普段の島からは想像も付かないものだった。
動きが速い、のは確かなのだが
どう考えても喧嘩の動きではない。
まるで【狩猟】を行っているかの様だ。
「出遅れたか!」
悪態を吐きながら、俺も慌てて参戦する。
自慢じゃないが、喧嘩には慣れている。
パンチを入れ、蹴り上げるなんてのは
実戦訓練に比べれば屁でもなかった。
正直、俺1人でも型が付く位だった。
予想外だったのは島である。
いや、決して褒められた事じゃない。
攻撃が執拗なのだ。
腕の骨一本でも折れば相手は反撃に来ない。
ならば見捨てて次に移行するのが俺ならば
島はもう一本も折ってしまう程である。
拳の打ち込み位置も違う。
俺は精々腹部だが、島は鼻先を狙う。
然も彼のパンチはどうも、俺より重いらしく
顔面の変形が半端なかった。
訓練生の身分ではあるものの、
相手はどう考えても落ちぶれ。
言ってみれば素人みたいなものだ。
だが、島の攻撃を見ていれば
手加減等していないのがよく解る。
相手を殺す勢いで殴りつけているのだ。
いや、このまま放置すれば間違い無く…。
俺は漸く、先程島が言った言葉を思い出した。
【歯止めが利かない】とはこう云う事か。
「島!!」
無責任に「思い切り暴れちまえ」なんて
言うべきではなかったのかも知れない。
しかし、島は俺を信じて…敢えてこの場に来た。
俺が出来る事。それは…。
「島、止めろっ!!」
俺は思い切って島を羽交い絞めにした。
が、身長差と勢いが災いして
俺はそのまま後方に弾き飛ばされてしまった。
これは普通の止め方じゃ駄目かも知れない。
「島っ! 目を覚ませッ!!」
少々乱暴だが、これしかない。
この方法でも駄目なら、その時は俺も終わりだろう。
島の正面に回りこみ、
俺は彼の顔面に拳を減り込ませた。
意識を失って倒れてくれたら良し。
逆に俺を敵認識して掛かって来たら
反撃するしか無いだろう。
こんな事ならやはり
俺1人で乗り込むべきだったかもな。
島との望まざる戦いに備え、
俺は体に力を溜めて構えたのだった。 |