| 泣きたくなる瞬間 |
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目の前に居た被害者を守れなかった。 係長の罵声を受けながら 直立不動のまま、 五代は歯を食い縛っていた。 「…純?」 「失礼します…」 軽く会釈し、刑事部屋を後にする。 その後姿を見ながら 平尾は眼鏡の縁を上げた。 「やぁ、此処だったか」 「一兵さん…」 「多分此処だと思って」 駐車場で五代は空を見上げていた。 僅かだが目が赤い。 「…あのさぁ」 「はい?」 「何もかも、自分の所為にするの止めなよ。 純は西部署配属されて間も無いんだし、 今回の事件は誰であっても防げなかったよ」 「でも…でも、俺……」 「…なぁ、純?」 平尾は顔を青空に向けたまま呟いた。 「我慢しないでさぁ、 …泣いちゃえよ。 そうしてスッキリして、 ホシを捕まえようや」 「一兵さん…」 「泣く事は恥ずかしくないよ。 だから…クヨクヨするよりも 思い切り泣いた方が良い」 「一兵さんも、泣く時有るんですか」 「そりゃあるよ。 …人間だもん」 その一言が五代の心に響いた。 涙が溢れてくる。 声が枯れる迄泣いた。 平尾はずっと傍に居てくれた。 優しく、時折肩を叩き、背中を撫でながら。 「スッキリした?」 「はい…。吹っ切れました」 「よし、じゃあ…」 「はい! 早急にホシを上げましょう!」 「そう来なくっちゃ!」 二人は肩を並べ、刑事部屋へ急ぐ。 そんな二人の後姿を これまた心配していた他の面子が見つめている。 「良い兄貴じゃないの、平尾君」 「少なくてもお前よりはな」 「酷い! 傷付くなぁ〜、鳩村君ったら」 「はいはい。莫迦やってないで。 行きますよ」 「ジョー、お前何時から仕切り屋に…?」 「行くか」 「おい、ハトまで!」 夕焼けが西部署を包む。 そして、刑事達の夜が始まる。 捜査に赴く為に…。 |