終わりなき旅路

惑星の行く末編・3

目の前の少年は膝を抱えうずくまっていた。

「ねぇ、君?」

美雨は笑顔を浮かべたまま腰をかが
少年の視線の高さに合わせた。

「一人なの?
 お父さんとお母さんと、はぐれちゃったの?」

少年は何も答えない。
サラサラした短い黒髪が
雨を受けてキラキラと輝いて見える。

「お姉ちゃんね、【美雨】って言うの。
 今ね、お兄ちゃん達と一緒に
 世界中を旅してるんだよ」

少年の肩が微かにピクッと跳ねた。
それと同時に。

「…ミウ?」
「そう、美雨」

少年はゆっくりと顔を上げた。
漆黒の両目。
それと特徴的だったのは
額に存在する真紅の瞳。

美雨は驚きの余り
両手で口を塞いだ。
全身が震えている。

「ミウ…って女の人を、探してたんだ」

少年はそう言って微笑んでいる。

「何でかは分かんない。
 でも、会えたらきっと分かるかな?って」

美雨は言葉にならず、涙を流している。

「どうして泣いてるの?」
「…どうしてだろうね?
 嬉しくても、涙って出ちゃうのかも……」
「嬉しい?」
「私もね、ずっと探してた。
 おでこに真っ赤な目を持った男の子を」
「それ、僕の事?」
「…そうよ。
 貴方の名前、何て言うの?」

少年は困った表情を浮かべている。

「気が付いたら此処に居たんだ。
 【ミウ】って名前の女の人を探してる事しか
 覚えてないの」
「…そうだったのね」

この少年がそうであるかどうかは
正直、判らない。
だが、自分ミウの存在を
この地で待っていてくれていた事が、嬉しかった。

「一緒に、行かない?」

そう言って、美雨は少年に手を差し伸べていた。

「何処へ?」
「此処じゃない、何処かへ。
 世界中の様々な場所へ。
 私達と一緒に」

いつの間にか美雨の後ろには
疾風・漣・轟が優しい笑みを浮かべて立っていた。

「一緒に旅立ちましょう」

少年は力強く頷くと
笑顔を浮かべて美雨の手を取り、立ち上がる。

雨雲の切れ間からのぞく太陽の光が
彼ら五人を優しく照らしていた。


【THE END】
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