あれから

惑星の行く末編・2

あの日から何日、いや 何年経過しただろう。
老いの無い肉体を持つ四人の若者達は
再生していく世界を旅していた。

自身の目で、耳で、全身で
変わりゆく世界を体感している。

「変わるモンだな」

青空を見上げ、感慨深く轟が口にする。

「俺達の過去の姿も
 きっとこう云う景色を拝みたかったんだろう」
「そうだと思う」

返答したのは漣だ。

「僕達だけじゃない。
 ハートも、きっと…」
「…漣。お前はそればっかりだな」

苦笑いを浮かべながら
轟は漣の肩を軽く叩いた。
ハートに対する漣の想いに関しては
一度も彼に尋ねた事は無い。
だが、彼の哀しげな瞳の輝きを見ていれば自ずと解る。

「嘗ての俺を見ている様だぜ」

轟は決まってそう呟くと豪快に笑うのだった。

* * * * * *

その日は珍しく雨模様だった。
以前のアクアミルとは全く異なる【雨】。
薄暗い空の下
四人はいつもの様に歩いていた。

「あれ?」

最初に気付いたのは美雨。
小さな影が微かに動いている。

「人間の…子供?」
「「こんな所に一人で?」」

漣と轟がほぼ同時に
互いの顔を見合わせて声を上げた。
疾風は無言で影を見つめていたが。

「行くか、美雨?」

妹の気持ちを察していたのだろう。
そっと彼女を後押しする。

「ありがとう、兄さん」

美雨はそのまま真っ直ぐに
影を目指して走って行った。

「良いの、疾風?」
「何者か判らんのだぞ?」
「判らないからこそ、
 美雨が確認しに行ったんだ。
 それに」

疾風はそう言うと
ニヤッとニヒルに笑った。

亜種人類ライカンスロープが三人揃っていて
 何も出来ない訳があるまい?」
「結構な自信で…」
「勾玉が無くとも、俺達は戦士だ。
 充分戦い抜けると思うが」
「その発言さぁ…。
 ツヴァイもだけど
 疾風も生粋の戦士、だよねぇ~」
「全くだ」
「……」

まるで自分達は違うとでも言いたげな二人の反論に
疾風はやや不満そうだった。
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