事件ファイル No.1-1

幼児連続虐待殺人事件

「この事件、覚えてるか?」

シーニーが画面に出して来た書き込み。
それに並列された新聞記事の切り抜き画像。

「去年春の事件ね。勿論、覚えてる」
「俺もだ。胸糞悪ぃ事件だったな」
「シーニー。この事件は裁判迄行って無いの?」
「あぁ、そうや。
 主犯とされる父親は責任能力無しと判断された」
「…精神科に掛かってたんだっけ? 確か」
「そうや。で、事件の時は
 正常な判断を下せる状況では無かったと」
「犯罪者が正常な状況下で罪を犯すとでも?
 馬鹿馬鹿しい理由だぜ」
「全くやな」

シーニーが更にキーボードを操作する。

「母親だけは法廷に立たされてる状況。
 求刑は懲役6年みたいや」
「執行猶予がついたんだっけ?」
「その辺は俺もまだ調べてへんからなぁ~。
 執行猶予付きなら、
 その期間に再犯せぇへんかったら
 大丈夫の筈やけど…」

ゲールは何かに気が付いたらしく
素早く指を動かしてベルデに何かを訴えている。

「そうなの?」
「どうした、ゲール?」
「その裁判中に類似事件が起こってたって」
「被害者は?」
「確かこの家にはもう一人、娘が居た筈やけど…」
「一寸待て。一旦整理させてくれ。
 この家には子供が何人居た?」
「最初の事件で犠牲になったのは一番下の弟。
 次に犠牲になったとされたのは一番上の姉。
 もう一人ってのは…真ん中の子やな」
「その子は無事なのか?」
「解らん。行方不明のままや」
「……犯人は本当に母親なのか?」

ロッソの目付きが鋭くなる。
シーニーは煙草セブンスターを咥えると
復讐掲示板に書き込まれた一文を拡大して見せた。

『子供達の苦しみを、恐怖を晴らしてください。
 あの悪魔、あの男に天罰を』

「この書き込みを見て、母親が主犯ホンボシ(真犯人)やと思うか?」
「シーニー…」
「先ずは父親である男の素性から暴く必要がある。
 もし此奴コイツが諸悪の根源なら…
 テメェの子供だけで凶行が止まるとは思えんなぁ」
「……」
「凶行はリンクする。俺等が散々見て来た現実や」
「なら、阿佐に探らせれば?
 犯行を抑えられれば、彼の手柄にすれば良い」

ベルデはそう言うと笑みを浮かべた。
釣られてロッソやゲールにも笑みが戻る。

「犯行を止められれば良し。
 尚且つ、お仕置きはその後にする…か」
「生かしておく必要はあらへん」
「そうだな。既に2人の子供の生命が犠牲になってる」
「下手すりゃ3人目が出るかも知れんからな」

その場に居た全員の表情が一瞬で険しくなった。
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