事件ファイル No.14-3

終 焉

【Memento Mori】の戦いは…終焉を迎えた。
最後の拠点を破壊し、核子を消滅させた。
それは同時に、彼等の【目標】が消えた瞬間。
永遠に続く時間をどう生きていけば良いのか。

「…帰ろうか」

迷う事無く、ロッソがそう呟いた。
シーニーも、ゲールも、そしてベルデも
笑顔で静かに頷いている。

「そうやな。旅もなかなか面白かったけど
 流石にそろそろ飽きてきたわ」
「一つの場所でゆっくり過ごすのも悪くないよね」
「そうね。里帰り、したいな」
「決まりだな。じゃあ、帰ろう」

彼等は笑っていた。
NUMBERINGとしての戦いにケリをつけ
彼等は新たな生き方を見出したのだ。

「帰ろう。日本へ。
 私達が生まれ育った国へ!」
「そして、愛する者達が待つ場所へ」
「俺、和食が恋しゅうなった!
 日本語の音色に耳を傾けたいわ」
「僕も! 帰ったらやりたい事、沢山有る!」
「みんなやっちゃおうよ!
 やりたい事! 楽しい事を!」

明るい笑い声が廃墟と化した拠点に響き渡る。
夜明けの陽が彼等を優しく照らしていた。
そして彼等の胸に輝く宝石。
あの日、妙子から与えられた【家族】の証のネックレスが
太陽の陽に照らされてキラキラと輝いていた。

* * * * * *

終焉を迎える魂と
永遠を生きる魂。

決して相容れない筈の魂達が
優しい音色を奏でている。
海の調べに耳を傾けながら
的場 志穂はバルコニーで
穏やかな日々に身を委ねていた。

その隣にはいつも、鷹矢 晋司が存在する。
片時も離れる事の無い、彼女の相棒パートナー
二人の左薬指には同じデザインの指輪。

「いつまでも…」
「ん?」
「いつまでも、こうして…」
「……」

晋司は何も言わずに身を起こすと
志穂の上体を支え、口付けを送った。

「傍に居るよ」
「晋司……」
「この場から、誰も居なくなっても…
 俺だけはお前の隣に居る。
 そう、誓っただろ?」
「…うん」
「なら、安心しろ。
 言ったろ? 俺の愛は『重い』んだ」
「私も負けず劣らず、でしょ?」
「あぁ。似た者同士なんだとよ」
「最高の誉め言葉ね」
「だな」

互いの温もりに包まれながら抱き締め合う。
それが二人の、自然な会話。

「皆の願いが叶って…嬉しいね」

そう言って笑う志穂の笑顔がとても柔らかい。
初めて出会った時、
彼女が自分に向けてくれた微笑みを思い出す。

「志穂」
「なぁに? 晋司」
「笑っていてくれ。ずっと」
「…貴方もよ」
「お前の望みは、全て叶えてやる。
 そう、言ったよな?」
「えぇ…。よく覚えてるわね」
「忘れねぇよ。お前との約束は、絶対に」
「じゃあ…」

志穂は、はにかみながら晋司の耳元に囁く。

「今度の日曜日なんだけど…」

二人は顔を見合わせ、互いに微笑む。

もう一度、始めよう。
あの瞬間ときから……。


- Fin -
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