Act・1-1

NSM series Side・S

「あぁ~暇だねぇ~」

山県はのんびりと椅子に腰掛け、
オーバーに伸びをして言った。

「こう暇じゃ体が鈍るよなぁ~」
「じゃあ組み手でもしますか?」

北条は珈琲片手にそっけない返事をする。

「偶には休ませて下さいよ。
 大将は非番明けだから良いけど、
 俺…宿直だったから」
「ほぉ~。
 で、書類は上がったのか、ジョー?」
「…上がってないから今書いてるんすよ」
「ジョー」

遠くの机から声が飛ぶ。
大門の後を引き継ぎ、
軍団を任された小鳥遊(たかなし)だ。

「今日までだからな」
「解ってますよ、班長…」

そう言うと北条は再びブツブツと
机に向かって何かを唱え始めた。

「ご愁傷様」

山県は十字を切ると
不意に刑事部屋の扉を眺めた。

扉が開き、
鳩村が、平尾が、立花が帰って来る。

「おぉ、お帰り」
「ただいま、大将!」
「冷たっ! くっつくな、一兵!!」
「暖めてよ~大将~~」

2人がじゃれあっているのを他所に
鳩村は自分の席に着いた。
立花もそれに習って椅子に座る。

「パトロール、異常無しです」
「ご苦労さん」

小鳥遊から労いの言葉。
鳩村は会釈すると煙草に火を点けた。

「平和ですね」

立花の声に、
鳩村は微かだが頷く。

「つまんねぇよ、退屈で」
「大将さん…」
「何かこう、
 吃驚する事でも起きないかな?」
「不吉な事言わないの、大将。
 それでなくても現実になるのに」
「…今事件起こされたら
 この書類が上がりません……」

平尾と北条に苦言を呈され、
山県は顔を顰めた。

* * * * * *

「又見事なミミズだな」

鳩村に嫌味を言われながら
何とか北条は書類を書き上げた。

「コレで何枚目だ? 始末書」
「…原因は大将ですよ。
 俺はとばっちり!」

北条は激しく山県を睨み付けると
小鳥遊に書類を提出した。

「…よし、一応はコレで良いか」
「一応、なんですね…」

コレが精一杯の北条は
項垂れて席に戻った。

「報告書、始末書。
 ジョーは直ぐに貯めるからね」

平尾は眼鏡を拭きながら
笑顔を浮かべている。

「昔から本当に
 文章書くのが苦手なんだから」
「仕方が無いでしょ?
 本当に嫌いなんすよ…」
「ジョー先輩にも苦手な物あるんですね」

立花の微笑みに、
北条は苦笑を浮かべた。

「ジョーは女の子も苦手だからな~」
「一兵さんっ!!」

顔を真っ赤にして怒る北条に
平尾は慌てて鳩村の後ろに隠れる。
ついつい余計な事を言う性格は
どうやら治りそうも無い様だ。
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