Act・11-2

NSM series Side・S

街を歩けば女子高生達の声が聞こえてくる。
大人気の刑事ドラマ。
その感想を嬉しそうに口にしている。
主演二人の関係性に盛り上げる彼女達の姿を
微笑ましく見守っていると。

「コウ!」

笑みを浮かべた相棒の姿が其処に在った。

「ハトさん」
「待たせたな。現状は?」
「あの通りです。
 中は膠着状態で今は動けません」
「お手上げか?」
「…と、思いそうですが」

立花は視線をビルの背後に移す。
其処には山県と北条が突撃準備に入っていた。

「…年考えろよ、あの莫迦共」

鳩村は苦笑を堪え切れないらしい。

「でも、先輩達があの場所で暴れてくれれば
 当然、中の連中の気は其方に釣られます」
「その隙に突入か」
「中の配置は一兵さんが調査済みです。
 この手筈で俺が犯人の足を止めますから」
「その隙に俺が人質の安全を確保?
 かなりお前の危険度が上がるぞ?」
「その辺なら俺一人じゃありませんし。
 ジョー先輩も居ますから、大丈夫ですよ」
「まぁ…武闘派二人が揃ってれば
 狭い場所だと何とかなるか」

犯人達の武装の事もあるが
あまり長い時間、硬直状態ではいられない。
速やかな人質の救出の為には
多少の荒事も止むを得まい。

「よし、それで行くか」
「はい」

雑居ビルの一室を舞台とした
人質立て籠もり事件は
小鳥遊班の迅速な作戦により
怪我人ゼロで無事に収束を迎えた。

* * * * * *

「あぁ~暇だねぇ~」

山県はのんびりと椅子に腰掛け、
オーバーに伸びをして言った。

「こう暇じゃ体が鈍るよなぁ~」
「じゃあ組み手でもしますか?」
「俺もお前ももう良い年なんだからさ。
 あんまり無茶すると、嫁さんが泣くぞ?」
「それ言われるとキッツいなぁ…」
「ジョー。それ、今日迄だから」
「えっ?」
「一児の父親が何時迄も始末書を溜め込まないの」

北条は笑いながら机の上の書類を片付けている。
空かさず入る、平尾のツッコミ。

「一兵さん、班長に似てきましたね」
「元々のタイプが似てるんだよ。
 一兵と班長は」
「あぁ、判る気がする」
「今に見てろ。もっと似てくるから」
「楽しみにしてます」

鳩村に珈琲を差し出しながら
立花はそう言って笑っていた。

穏やかな雰囲気を一変させるサイレン音。
そして、事件発生のアナウンス。

「現場は渋谷区宇田川町20!
 直ちに現場へ急行せよ!!」

小鳥遊の号令に、男達は直ぐ刑事部屋を飛び出した。
各々がマシンに飛び乗り、現場へと急行する。

彼等が愛するこのコンクリートジャングルを守る為
男達は今日も凶悪に立ち向かう。
それこそが【刑事】の矜持。
大門軍団から継承された
小鳥遊班の【証】なのである。

- 了 -

お題提供:[刑事好きに100のお題]
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