Prolog

間も無く訪れる絶対的な『死』を目前に
私の心はもう少し静かに
穏やかになるかと期待していた。
残り僅かの生である事は承知していた。
既に寿命は諦めもついていた。
未練等、無い筈だった。

「……」

しかし、現実はどうだ?
全身で「死にたくない」ともがいている。
散々全身に返り血を浴び
多くの命を奪ってきた暗殺者の私が、である。
身勝手にも程がある。
今更、まだ生きていたいなどと…。

「……」

生きていたいのか。
それとも、死にたくないのか。
或いはどちらも、なのか。

「……」

もう直ぐ其処迄迫っている。
あの死の灰に覆われれば
どんな生命も死に絶えてしまう筈だ。
万に一つも無い。
最早私に、別の逃げ道は用意されていない。

「…兄さん」

轟音に掻き消されていく。
この思いと共に。

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SITE UP・2017.07.25 ©森本 樹



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