間も無く訪れる絶対的な『死』を目前に
私の心はもう少し静かに
穏やかになるかと期待していた。
残り僅かの生である事は承知していた。
既に寿命は諦めもついていた。
未練等、無い筈だった。
「……」
しかし、現実はどうだ?
全身で「死にたくない」ともがいている。
散々全身に返り血を浴び
多くの命を奪ってきた暗殺者の私が、である。
身勝手にも程がある。
今更、まだ生きていたいなどと…。
「……」
生きていたいのか。
それとも、死にたくないのか。
或いはどちらも、なのか。
「……」
もう直ぐ其処迄迫っている。
あの死の灰に覆われれば
どんな生命も死に絶えてしまう筈だ。
万に一つも無い。
最早私に、別の逃げ道は用意されていない。
「…兄さん」
轟音に掻き消されていく。
この思いと共に。 |