File.1-1

『それ』を知ったのは本当に偶然だった。

最近のアイツは何故か艦長とだけしか会話をしない
一層の孤独を漂わせていた。
アイツが人を寄せ付けなくなったのは
イスカンダル星へ向かう直前。
地球との最後の交信を終えてから。
俺は母や弟と、
他の者達も家族と会話をする事が出来た。
しかし、俺が知る限り…
アイツには、古代にはもう家族は居ない。

古代が圧倒的な寂しさを抱えながら
一人で艦内を彷徨っていた事も
この時の俺は恥ずかしながら
全く気が付いていなかった。
どんな思いで仲間達と擦れ違い
言葉を交わしていたのか。

そして、古代の姿を確認する事も叶わず
何が起こったのかを知る事も無く
かなりの月日が経過していった。

* * * * * *

それは何時だっただろう。
或る日の晩、それだけは確かだ。
手持ち無沙汰だった俺は寝る前に、と
宛ても無く何気に艦内を散歩していた。

足の向くまま、気の向くまま。
そしていつの間にか艦長室の前まで来ていた。

どうしてだったのかは解らない。
アイツの、古代の事が気に掛かっていたからか。
それとも…。

「ん…?」

不意に妙な音が聴こえてきた。
艦長室からだ。
微かに扉が開いていたらしい。
聞き慣れない高い男の声、そして会話。

「…艦長?」

好奇心には勝てず、
俺は扉の隙間から部屋を覗き見た。

薄暗い、殆ど明かりを点けない室内と二つの人影。
1人は艦長だ。
もう1人は…誰だ?
全裸で、然も後ろ向きだから誰かまでは判らない。
しかし、大きく背中を揺らしながら
甲高い声で喘ぐその人影の声には
確かに聴き覚えが有った。

『まさか…?』

目の前の事実から逃げ出したかった。
いや、間違い無く俺は逃げた。
気付かれない様にそっと部屋を後にし、
慌てて自室に駆け込んだ。

『まさか…。いや、しかし……』

信じられなかった。
信じたくなかった。
だが、声は間違い無く古代のものなのだ。

あいつは何をしていたんだ?
どうして艦長と2人で、あんな薄暗い密室状態で?
然も…古代は服を全て脱いだ状態で…。

下らない。
実に下らない押し問答。
解っている筈だ。
男なら、大人なら。

ただ、それを認めたくないだけだ。
親友の、古代の事を思うと。

親友…?
俺と、古代は……。

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SITE UP・2010.01.01 ©森本 樹

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