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翌日、余り眠れなかった俺は ボーっとした重い頭を支えながら フラフラと廊下を歩いていた。 すると背後から軽く肩を叩く奴が居る。 「おはよう、島!」 古代だった。 随分元気そうじゃないか。 それに心成しか上機嫌にも見える。 俺はマトモに眠れなかったと云うのに…。 そう思うと何だか無性に腹が立ってくる。 返事もせず、そのまま俺は 無視を決め込んでやり過ごした。 勿論こんな大人気ない態度をしたのは コレが初めてである。 学生時代ですら、こんな事は未経験だ。 「…島?」 古代には当然、 何が起こったのかすら理解出来ないだろう。 訳が解らないまま、唖然とした表情で 俺の後姿を見送っているに違いない。 呆然と立ち尽くしたまま。 内心『ざまぁみろ』と悪態を吐きながらも 心中は穏やかにならず、どうもスッキリしない。 自分の大人気ない態度にも少々腹が立っていた。 俺は古代の『親友』だ。 ずっとそう思ってきたし、 アイツも事有る毎にそう言ってくれている。 もし古代が艦長の事を本気で想っているのであれば 応援してやるのも『親友』ではないだろうか。 (男同士、とか上司と部下の間柄、は一先ず考えから除外しても) そうだ。 それが例え報われない思いだとしても アイツが出来るだけの事を応援してやって、 相談に乗ったりして支えてやって。 それがどうして出来ないんだ? 出来ないどころか、今の態度では正反対だ。 『親友』で在る俺がアイツを追い詰めてはいないか? そして、どうしてこんなに胸が苦しいんだ? 俺はイライラしながらも 自分の席に着き、大きく深く溜息を零した。 何が遭ったと言うのだろう。 島が急に冷たくなった。 声を掛けても無視されるか、睨まれる。 理由を聞こうにも避けられてしまう。 他の乗組員達とは楽しそうに談笑しているのに 俺が側に行くと態度が急変する。 艦内で一人、 置き去りにされてしまったかの様な孤独感に 俺はまた恐怖を覚えていた。 地球を後にする時、あの時に感じた 自分が踏み入る事の出来ない空間がまた… こんなにも俺を孤独に苛む。 辛い。 島と話が出来ないだけで、こんなにも辛い。 耐え切れない寂しさ。 …どうかしている。 「どうした、古代?」 「艦長…」 艦長とは二人きりで酒を呑み交わしてから 色々な悩みを聞いてもらっている。 あれから随分と相談に乗ってもらっていた。 俺にはもう、家族が居ない。 だが、他の乗組員に対して 弱い一面は見られない様に努力している。 見られたくない。 見せられる訳が無い。 俺は誇り高き『宇宙戦艦ヤマトの戦斗班長』として 誰よりも強く在らねば成らないのだから。 だけど、本当の俺は…こんなにも脆く、弱い。 虚勢を張る事でしか 己を保てない程に、情け無い位に弱い。 「島と何か遭ったのか?」 「いえ…」 「ん?」 「判らないんです。 一体何が起こったのか、全く…」 「ふむ…」 事実だ。 島は突然変わってしまった。 そうとしか返答出来ない。 何故? どうして? 何度考えてみても原因すら判らない。 「古代、何が遭ったのかは知らぬが 気落ちせず、諦めたりはするな。 島が今、何を思っているかは判らんが いずれアイツの方から打ち明けてくれるだろう。 それを信じて待ってみると良い」 「艦長…。はい!」 そうだ、いつか必ず。 無理に聞きだそうとしなくても 島ならばきっと自分から話してくれる。 俺は島を信じて待つ事にした。 その、『切っ掛け』を。 |