Data.1-1

大介、聞こえるか?
お前を喪って…もうどの位、時間が経過したんだろう。
あの瞬間に、俺の時間は止まってしまった。
折角…生きているのに。
晴れて雪と結ばれ、可愛い娘も授かったと云うのに。

俺の心は晴れぬまま。
いや、寧ろ…十字架を背負ったままだ。
こんな思いで居る位なら、いっそあの時…。

何度コスモガンの銃口を自分に向けても
その引き金を引く事すら出来ずにいた。
そうだ、お前は生きたかったのに。
何で俺が生き残っているんだ?

あぁ、又…あの夢だ。
17年の歳月を痛感させられる夢。
俺にとって最悪の夢。
氷の様に冷たい眼差しで俺を見つめるお前の姿に
俺は何も言い返せず、立ち尽くすのみ。

『お前は誰だ?』
『お前は…俺の知る古代じゃない』
『俺の知っている進じゃない』

矢の様に浴びせられる言葉に打ちひしがれ
俺は泣きながら目を覚ます。

「あぁ……」

震える体を堅く抱き締め、落ち着こうとするが無駄な事。
この17年間、ずっとこの繰り返し。
そして俺は…酒に逃げる。
決して強くないのに、悪夢を忘れたくて…。
味なんて判らない。
吐くまで呑むだけだし、吐き出してしまえばどれも同じ。

「大介…許してくれ……」

俺が生き残ってしまって。
俺が…守り切れなかったが為に…。

* * * * * *

ヤマト艦長席で古代 進は静かに
メインモニターを見つめていた。
黙して何も語らず、動じないその姿に
若きクルー達は羨望の眼差しを送る。

だが、古代は動じないのではない。
動きたくても動けなくなっていた。
心を動かせば、哀しみが増えるだけ。
心を凍りつかせて迄も
彼は『生きる』事に執着しようとしていた。
守れなかった恋人の為にも。

『艦長、間も無くプロキオ星系に到着します』

電算室から送られる折原 真帆のナビゲートボイスに対し
古代は軽く頷いただけだった。
直後に送られてきたデータにもさっと目を通し、
それを無言で桜井 洋一へと送る。

実に味わいの無い、事務的な作業である。

古代は恐れていた。
部下達と深く触れ合う事を。
心を曝け出す事を。

触れ合わなければ、彼等が命を落とす事は無いと
暗示めいた思いに縋っていたのである。

古代 進と宇宙戦艦ヤマト。
伝説と背中合わせに流れる『死神』の渾名。
若き頃より仲間の死を見てきた古代にとって
これ程辛い呼び名はなかった。

好き好んで死に追いやった訳では無いのに。
替われるものなら、幾らでも替われたのに。

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SITE UP・2010.2.1 ©森本 樹

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