Data.1-2

「艦長?」

不意に声を掛けられ、視線だけを動かす。
其処には何時から居たのか、島 次郎が立っていた。
古代の旧友、島 大介の11年歳が離れた弟。
先日のSUS軍との全面戦争に於いて戦死した
副艦長、大村 耕作の後釜としてヤマトに参加したのだ。

元々彼はヤマトクルーに登録されていたのだが
地球連邦科学局長官、真田 志郎の依頼で
人類移民計画の立案に着工し、それ等を優先させる為に
入艦が先延ばしになっていた。

それ迄の彼は新ヤマトの復活に最初から参加し
真田と共同でヤマトの自動操舵プログラムを手掛けた。
実践こそ乏しいが、彼には豊富な知識が有り
何よりも島 大介の血縁として、その手腕が期待されていた。

その為、入艦直後から古代直々の指名で
副艦長と航海長を兼任する事となった。
嘗ての兄、大介と同じ様に…。

「艦長、顔色が芳しくありませんが…」
「…大丈夫だ」
「少し休まれては?」
「……有難う」

次郎はそれ以上、何も言わない。
細やかな心遣いは兄以上であり、
古代も変な気を回さなくても良いので、非常に楽であった。
だが、そんな次郎にも…彼は何処かで心を閉ざしている。

『お前は…俺の知る古代じゃない』

不意に今朝の夢で大介から言われた言葉を思い出し、
恐ろしさから肩が無意識にビクンと跳ねた。

「…美晴先生を呼んで来ます」

流石に見ていられないと判断したか。
半ば強制的に次郎は古代にそう告げると
足早に第一艦橋を後にした。

「…余計な事を……」

帽子のツバに隠れた彼の瞳は
哀しげな色で次郎の後姿を追っていた。

* * * * * *

次郎にとって、今は進こそが『兄』である。
学生時代、地球に身寄りが無かった進は
長期休暇に入ると必ず島家に居候した。
それは大介の懇意であり、願いであり、
進が重々彼の気持ちを理解し、従った結果である。

偶に会える2人の兄。
特に進はとても次郎に対して優しく、
大介よりも懐いていたかも知れない。

歳を重ねる毎に次郎も大人の事情を理解し、
大介と進が恋人同士で在る事、
互いを愛し合い、想い合っている事を悟った。

同時にそれは次郎にとって
ほろ苦い初めての失恋にもなった。
次郎にとって進はいつの間にか
『初恋の相手』となっていたのだ。
報われない想いと知りつつも
大介と一緒に居る時に見せる進の笑顔が
次郎は何よりも好きだった。

「何時から進兄さんは…
 笑顔を失ってしまったんだろう…?」

漸く念願のヤマトクルーとなり、
愛する兄の片腕として働けると云うのに。
次郎の心も又、晴れなかった。

「大介兄さん…。
 兄さんだったら、今の状況を…
 どうやって打破しますか?」

無敵と呼ばれたヤマトの誉れ高き航海長。
そんな兄に対し、次郎はそっと語り掛けていた。

「俺は…進兄さんを……」

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