Data.5-10

「虫が、良過ぎる…かな?」

美雪は昨晩の自身の発言を恥じている様だ。
今迄は子供と思っていたが、やはり成長している。
言わずとも解っているのだ。
美雪も、ヤマトの一員として。

「いや…そんな事は無いさ」
「お父さん…」
「頼りにしてるぞ、美雪。
 レガシーの一族の為にも、アクエスの民の為にも
 俺達は、ヤマトは、負ける訳にはいかん」
「…はい、艦長!」
「良い返事だ」

まもなく戦場に向かわねばならなくなる。
そうすれば、親子の時間は持てなくなるだろう。
ふと、そんな思いが去来し
古代はその大きな手で美雪の頭を優しく撫でた。

「お父さん…私、もうそんなに子供じゃないよ?」
「今だけ、お父さんの好きにさせてくれ」
「…仕方が無いなぁ」

そう云う美雪自身も満更ではなく
雪は初めて見る父親と娘との触れ合いに
そっと目頭を押さえていた。

「じゃあ、雪…」

古代は静かに微笑むと、艦長帽を被り直した。
いよいよ、出陣である。

「お帰りを…お待ちしています」
「お母さん、必ず帰って来るからね!
 敵を追い払って、必ず戻って来るから!!」
「えぇ、美雪…。
 待っているから、無事に帰って来て頂戴。
 約束よ…」
「うん、約束!」

確かな足取りで宮殿を後にする古代と美雪。
その後姿を只見送る事しか出来ない雪。
白い指が真っ赤になる程に強く拳を握り締め
二人の姿が小さくなっても見送り続けていた。

* * * * * *

同じ頃。

「いよいよだな」

小林の言葉に、次郎と上条は力強く頷いた。
迷いは無い。
この美しい惑星を、母なる地球とよく似た惑星を
侵略者の手から守る為に。

「この星が平和になれば…
 雪さんも地球に帰れるかも知れない。
 その為にも、負ける訳にはいかないんだ」
「俺は諦めないぜ、決して」
「上条、小林…。
 そうだ、俺達のヤマトでこのアクエスを守るんだ」

どんな敵が攻めてこようとも退く訳にはいかない。
此処には大切な人が存在しているのだ。
ヤマトは、今迄そうして戦い抜いてきた。
愛する人を守る為、大切な物を守る為に。

「俺達のヤマトを信じて戦うのみ。
 古代艦長の下で。
 さぁ、行こう! 上条、小林!」
「「おうっ!!」」

今は静かに波に揺られるヤマトの勇姿。
大いなる大宇宙を舞台に繰り広げられる戦いに備え
束の間の休息は充分に取れたかの様だ。

「技術班、機関室が意地を見せてくれたんだ。
 今度は俺達がその期待に答えないと」

次郎はそう呟き、キッと空を睨み付けた。
其処に居るであろう、敵艦に向かって。

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