Unbekannte Welt・10

「間に合った様だな」
「オキタさん…。それに…」
「ゲド隊長の計らいでね。
 こうしてハルモニアの国旗を見せて大軍で移動すれば
 敵さんが勘違いして逃げて行くだろうって」
「ゲドさん…。有難う御座います。
 御蔭で助かりました……」
「無事で、良かった」

言葉少なげでは有ったが、ゲドは初めて笑顔を見せた。
ススムも傷だらけになった顔で微笑を返す。

嵐は去ったかに思えた。
直後のヒューゴの悲鳴を聞く迄は。

* * * * * *

カラヤクランの生存者は10名。
嘗て村には50名程暮らしていたとされ、
余りにも多くの血が流された事になる。

その中には、脱出の際にヒューゴと離れ離れになった
幼馴染のルルの姿も有った。
正面から一太刀。
せめて、苦しまずに逝けたのだろうか。

「此度の事…カラヤクランの族長として
 皆様には本当に感謝しております」
「俺達がもう少し速く辿り着ければ或いは…」
「いいえ、事態は変わらなかったでしょう」

慰めさえも、意味を成さない。
ススムは更に項垂れてしまった。
結局は何も出来なかったと同じではないかと
激しく自己嫌悪に陥っていた。

そんな彼を、カラヤクラン族長のルシアは
優しく励ましていた。

「ススムさん、息子 ヒューゴから聞きました。
 貴方が真っ先にこの村を救うべく動いてくれた事。
 貴方の勇気が、私達10人を救ってくれたのです」
「ルシア族長…」
「力不足だと思わないで下さい。
 貴方の働き掛けが生命を救い、村を救った。
 カラヤクランは滅ばなかった。
 我々は…貴方に救われたのです」

ススムはルシアの言葉の中に
嘗ての母の声を聞いた様な気がしていた。

『迷う時も有るでしょう。
 己を悔む時も有るでしょう。
 自分に自身が持てなくなる時も有るでしょう。
 ですが、必ず光は有るのです。
 行動に結果が伴う様に…
 お前の信念に、必ず光が照らされます』

「皆さんはこれからどちらへ?」
「グラスランドを経て、群島諸国へ」
「群島諸国……」
「では、俺達の護衛は此処迄だ」
「ゲドさん?」
「俺達はキャラバンを無事に
 グラスランドに送り出すミッションを行っただけだ」
「ゲドさん……」
「キャラバンの皆さん、どうぞ良い旅路を」
「有難う御座います、ゲドさん。そして皆さん…」

カレリアへと戻っていくゲド一行を見送りながら
ススムは改めてゲドと云う男の強さを感じていた。

『傭兵…。あんな生き方も有るんだな…』

「皆さん、これから我々はカラヤクラン再興を目指します。
 我が息子 ヒューゴにはもっと世界を知る必要が有ります。
 どうか皆さんの旅に同行させては頂けませんか?」
「え…?」

生き残った中で子供はヒューゴ只一人。
再興するにしても大変な事の連続だろう。

「ヒューゴ、お前…どうする?」
「俺はもっと強くなりたい。
 強くなって、もう…ルルの様に
 大切な誰かを喪いたくないんだ」
「ならば、付いて来るが良い。
 ヒューゴよ、我等と共に群島諸国を目指そう」
「あ、有難う! 俺、頑張ります!!」
「良かったな、ヒューゴ!」
「うん! ススム、皆! これからも宜しくな!!」
「あぁ!!」

また一人 仲間が増えた。
目指すは群島諸国。
遥か彼方だった目的との距離が
少しずつ近くなっているのを
ススムもダイスケも肌で感じ取っていた。

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SITE UP・2013.04.05 ©森本 樹

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