Unbekannte Welt・9

戦闘をより速く終わらせるには
大将に当たる者の首を落とす事にある。
その鉄則に従い、サイトウが突撃を試みた。
手斧を振り回し、クリスを狙ったのだ。

「させるかぁー!!」

騎士団側も空かさず応戦する。
サイトウとほぼ同じ体格の騎士が
全身で彼の突撃を食い止めたのだ。
その背後から容赦の無い矢の雨。
クリスの隣に位置するエルフの弓手の攻撃だった。

「サイトウ!」

斬り合ってる手前、サイトウも後退が出来ない。
只、他の騎士の援護を抑える為に
ジロウとアキラも弓矢攻撃を続けていた。

「ダイスケ! もう一度魔法を使えるか?」
「可能だ!」
「ならば、サイトウに向かう矢を撃ち落してくれ!」
「ススム、お前はっ?!」

ダイスケの呼び掛けに答える事は無く、
ススムはサイトウの背後からクリスに斬り込んだ。

「くっ!!」

激しく火花を散らす剣と剣。
女と思っていたが、クリスの身体能力は
男のそれと引けを取らない。
油断していると、逆にやられるのはススムの方だ。

先程ボルスと呼ばれた騎士がススムを倒すべく
大きな剣を振り上げている。

「ススムっ!!」

ダイスケの声。
しかし振り下ろされた剣を受けたのは
ススムの体ではなかった。
ノーマークだったのだろう。
其処には既にアルフォンが陣取っており、
彼が自分の剣を利用してススムを守っていたのだ。

向こうにももう一人、剣の使い手が存在する。
その動きに翻弄され、
ダイスケはなかなか魔法を行使出来ずにいた。

魔法を使うには意識を集中させる時間が必要となり
敵側はその隙を突いてジロウやアキラを攻撃する可能性が有る。
勿論、詠唱中にダイスケ自身が狙われる事も充分に有り得た。

どちらも後一手が打てない。
そんな状況が続いていた。

* * * * * *

「クリス様!」

それ迄戦列に参加していなかった騎士の一人が
何かを発見したのか、慌ててクリスの名を呼ぶ。

「サロメか! どうした?!」
「引き時です! あれを…っ!!」
「?!!」

クリスの目に映ったのは
何と友好条約を結んでいる筈の
【ハルモニア神聖国】の国旗だったのだ。

「何故にハルモニアが…?」
「裏切られたんじゃないのか」
「まさか…っ?」
「戦いに『まさか』なんて無い。
 常に裏切りの繰り返し。そうだろう?」
「…くっ! 一旦引くぞ、サロメ!!」
「はっ!!」
「一時休戦だ、ススム。
 …命拾いしたな」
「クリス…」

ススムの心にはクリスに対する憎しみよりも
いつの間にか哀れみの思いが芽生えていた。
兄と同じ、愚かしくも悲しい道を生きる姿に。

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SITE UP・2013.04.02 ©森本 樹

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