No. 027:きみのてのひらにキス

散文 100のお題

面白おもろいカップル」

猫じゃらしを巧みに操り
黒い仔猫をあやしながら
亜斗武は意地悪気に笑みを浮かべていた。
自身の掌をザラザラとした舌が当たる度
思わず笑みが零れてしまう。
まるでこの仔から
キスをされている様な不思議な感覚。

「?」
「彼女は野良の男をかってるし
 お前は野良の式神を飼うとる」
「永夏に関してその台詞は
 色々と厄介事が発生する……」
「じゃ、脳内で適当に変換して」
「何じゃそりゃ?」

そもそも【野良の式神】など考えられない。
弦耶はそう反論しようとした。
その出鼻を挫く様に。

「お前に譲渡したって訳やな、この仔を」
「…亜斗武。お前なぁ~」
「相当な術師とみた」
「相手が、か?」
「あぁ。で、結構ヘビースモーカーやな」
「あん?」
「この仔が纏っとる香りな。
 洋物の葉巻の匂いがする」
「流石に葉巻の所有者を洗う訳にもいくまい」
「そりゃな。数が多過ぎるわ」
「…だよな」
「弦。お前、契約したん?」
「一応は」
「契約に『一応』なんざ存在せんぞ?」
「契約はした。望央と伯母さんの前で」
「あれ? 十六夜小父おじさんは?」
「偶々外回りだったんだよ。
 在宅なら絶対に一連の流れを見てるって」
「だよな。そして突っ込む、と」
「まぁなぁ~」

タイミングの問題、と言い切ってもいいものか。
弦耶と亜斗武は意味深に
互いの顔を見つめていた。

* * * * * *

「黒猫を使役する退魔師の家系…?」

暫し思案したものの
乾月は眉間の皺を深くしただけだった。

「流石に思い当たらんな」
「左様か」
「その気になれば式神は様々な姿に変化出来る。
 それこそ術師の能力次第で幾らでも、ね」
「それもそうじゃったな」
「しかし、家を離れてその様子を伺い見る…。
 ムサシの【目】を用いてとは恐れ入った」

十六夜はニヤリと笑みを浮かべる。
彼から朔耶へ、そして望央へと継承された
三体の式神の主の座。
しかし、最も付き合いの長いムサシに関しては
現主の望央が知らない間に
十六夜と意識が繋がっている状態となっていた。
他ならぬ『ムサシの希望』で。

「ムサシってさ」

玉露で口を湿らせてから
乾月はふとこんな事を言い出した。

「本当は誰が生み出した式神なんだい?」
「おや。お主は気が付いておったのか?」
「まぁね。所謂『時限式』に活動出来る様
 細工していたって言うのであれば
 六条親王の変から50年後に
 ムサシが姿を現しても納得がいく。
 …とすれば、ムサシの生みの親がお前ではなく
 賀茂かもの 礼惟のりただだと導き出される」
「御明察の通りじゃ」

十六夜は満足気な笑みを浮かべ、頷くと
美味そうに玉露を喉に流し込んだ。
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お題提供:泪品切。(管理人名:yue様)