| [39] 復活 |
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「……」 長い夢を見ていた様な気がする。 北条はうっすらと瞳を開けた。 胸の辺りに温もりを感じる。 「…!」 其処には咲樹が居た。 疲れた様子で眠りについている。 頬には涙の跡。 そっと拭いてやろうとした瞬間、 カシャンと金属音がした。 『そうか…』 漸く北条は自分の状態を理解出来た。 禁断症状に苦しんでいた自分を 彼女は此処までして看病してくれたのだ。 嬉しかった。 『風邪…引くぞ』 声に出さず、北条は微笑んだ。 「…ん」 目が覚めた咲樹の視線は 北条の表情に注がれた。 優しげな瞳に光が戻っている。 慌てて猿轡を外し、 彼の声を待つ。 「ジョー…」 「心配…かけた」 「ううん、良いの…。 貴方が無事なら…それで……」 後は涙で声にならない。 「泣くな…」 声もはっきりとしていた。 彼は漸く薬物中毒の地獄から 這い上がってきたのだ。 「手錠…外せるか?」 「う…うん。待ってて」 右手の手錠を外す。 すると彼の手が素早く咲樹の頬に触れた。 「こんなに泣かせて… 済まなかった」 「ジョー…」 優しく、何度も頬を撫でる。 そして毛布越しに彼女の体を抱き締めた。 「温かい…」 しみじみとした口調で 北条は呟いた。 「温かいよ、本当…」 生きてる事を実感しているのか。 抱き締める手に力がこもる。 「良かった、無事で…」 「ジョー…」 「それだけが心配だった。 お前と、あの子の事が…」 「あの子も無事よ」 「そうか…。 怖い思い、させちまったな」 「そうね…。 でも、強い子だった」 「…救われた。 その一言で」 「ジョー…?」 「間違ってなかった。 俺、それだけが不安だった。 あの子の心に傷を付けて、 お前を苦しめて…。 そんな自分が許せなかった」 「……」 「自業自得だと、自分を責めてた。 でも…違ったんだな」 「貴方は悪くないわ」 「俺はまだまだだよ。 刑事としても、人間としても…」 北条は何かを思うのか、 そっと瞳を閉じた。 「ジョー…?」 「拉致されて… 禁断症状の時も… お前、励ましてくれてたよな?」 「えっ?」 「…有り難う」 北条は再び眠りに落ちた。 余程疲れていたのだろう。 寝息が静かに聞こえてくる。 「…お休み、ジョー」 咲樹はそう言うと彼に毛布を被せ、 服を着直した。 仮眠室の外で、 偶然鳩村は二人の会話を聞いていた。 「自分を責めてた…か」 刑事とて人間である。 時としてどうしようもない事もあるだろう。 それが許せなかったのか。 だとしても哀しい選択である。 「莫迦野郎だな、アイツは」 そっと悪態を吐いた。 まだまだ彼は若いのだろう。 だからこそ許せなかったのだろう。 鳩村はそう思う事にした。 無論、彼を責める気など更々無い。 何も聞かなかった事に決め、 彼は仮眠室を後にした。 |