[44] 計画・1

屋台を出てから、
松田の顔が急に変わった。
険しい表情。

「リキ…」
源田の声に、
松田を意を決して声を出した。

「越川を…釈放する」
「えっ?」
その場に居た全員が一瞬言葉を失った。

「でも奴は…」
「留置所から護送される時を狙う」
「リキさん」
「只、この作戦は
 俺一人では達成不可能だ」

「リキさん、本庁行きは…」
鳩村の言葉に
松田は微笑を浮かべた。

「団長が居ない所で働けないよ。
 俺は大門軍団のリキなんだ。
 本庁なんて関係ない」
「乗った!」
最初に声を上げたのは源田だった。
「俺も…団長が居なくなるなんて御免だ」
「団長の為なら何だってやりますよ!」
鳩村が、北条が、そして平尾が賛同する。
「有り難う…」

「リキさん、私も」
咲樹が名乗りをあげようとした時
松田はそれを制した。
「姫は駄目だ」
「…どうして?」
「夢を叶える迄は
 刑事を辞める訳に行かないんだろう?」
「でも、それとこれとは…」
「姫は団長と谷さんの動きを俺達に教えて欲しい」
「リキさん…」
「汚れ仕事は俺達に任せてくれ。
 若手全員が一斉に居なくなると
 流石に団長に疑われる」
「…解ったわ」
自分が女だからだろうか。
ふと、咲樹の脳裏にそんな考えが過ぎった。
すると。

「姫が一番冷静に分析出来るからさ。
 現状をな…」
松田には解っていた。
其処に男も女も無い。
団長の為に、最善のポジショニングを。
漸く咲樹は松田の言わんとする事を理解した。
「…成功を、祈るわ」

「あぁ。それと皆、
 万が一失敗しても
 『単独行動』と白を切れ。
 逃げ損なったら逆らうな」
「…助けにも行けないな」
「そうだ。越川の釈放が最重要。
 …イザと言う時は見捨てる勇気も必要だ」
「だから『逆らうな』なのね。解った…」
一番自信無さそうな平尾が溜息を吐く。
「団長の為だ。
 耐えろよ、一兵」
「ハトさんに言われなくても…」

あくまでも目的の為には非情に。
確かに咲樹には合わない仕事だろう。

「団長を、頼むな」
「うん」
皆に見つからないように
北条はそっと咲樹の手を握った。
別れを覚悟するかのように。
その手は震えていた。

* * * * * *

一人トボトボと帰っていく咲樹の後姿を
男達はそれぞれ複雑な思いで見送っていた。
失敗すればもう二度と会えないかも知れない。
誰もがそう思っていた。

それでも団長の為にと決意を新たにする者、
失敗しなければ良いんだと高を括る者、
それぞれが重い口を開く事無く思う。
北条は何時までも咲樹を見つめていた。
その姿がやがて見えなくなる迄。

「ジョー…」
松田の声に、
北条は漸く我を取り戻し
何事も無かった様に振り返る。

「済まないな…」
「リキさん…」
何を思っての言葉か、
それは北条が一番よく解っていた。
松田はそう云う男なのだ。

「じゃあ話を詰めていこう」
男達は計画を練り始めた。

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SITE UP・2005.06.05 ©森本 樹

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