[47] 越川 釈放

計画は成功した、かに見えたが
思わぬ落とし穴が待っていた。

「やばい! 後輪タイヤがやられたっ!!」
囮として後ろを走っていた
北条と平尾の乗る車が
タイヤを撃たれ、走行不能になったのだ。

「何やってんだよ、莫迦ッ!」
「逃げるしかない!」
「足でかっ?!」
「しかないでしょ! 早くっ!!」
「…ったくっ!!」
二人は車を捨て、勢いよく飛び出した。

転がるように坂を駆け下り、
とにかく我武者羅に逃げた。
後ろからは警官が追ってくる。

北条は塀を攀じ登り、身を隠したが
平尾は其処まで辿り着けなかった。
警官の足が思ったよりも速かったのだ。

「ま、参った! 降参、降参!!」
松田との約束通り、
平尾を素直に白旗を揚げた。
塀の向こうでは気配が無い。
北条もまた松田の言葉通り
平尾を捨てて逃げた。
それを覚悟しての囮だった。

時間を稼ぐ事。
それが二人の目的だったのだから。

* * * * * *

大門の元に平尾が逮捕されたと言う報が入ったのは
それから間もなくだった。

「一兵の奴…」
谷の言葉に項垂れる咲樹。

「谷さん、本庁に行って来ます。
 一兵の身柄引き渡しと…」
「越川の件ですな。
 解りました」
大門にとって吉と出るのか凶と出るのか。
それは誰にも判らない。
ただ、大門は本庁の狙いが知りたかった。
何も動けないのは嫌だった。
若手が自分の為に身を賭けたのに、
自分だけが何も出来ないのがもどかしかった。

「リキ…」
爽やかに微笑む松田の顔が脳裏を過ぎった。

「莫迦野郎…」
悪態を吐いた。
自分を思って危険を冒した
最愛の右腕に。

「莫迦だ、お前達は…」
泣きたくなった。
一人だったら泣いてしまうかも知れない。
彼等の必死の思いが伝わってくる。

『団長…』

松田の声が、脳裏を掠めた。
優しい、声だった。
「リキ…。皆……」
大門は静かに本庁へと向かって行った。

* * * * * *

「君が命じたというのか?!」
本庁刑事部長の島貫が叫ぶ。

「はい」
「本当かね?」
「はい。自分が部下に命じました」
「君達西部署が行った行為は…
 警察全体を愚弄した事になるのだぞ!!」
島貫の怒りは収まらない。

「お怒りはご尤もです。
 如何なる責任も、負う覚悟です」
「君は…」
そう言って島貫は言葉を止めた。
歯切れの悪い止め方だった。

「…もう良い。
 部下を連れて帰りたまえ」
「…解りました」

何かを隠している。
大門はそう直感した。
それが越川と
どんな関係が有るのか判らないが…。

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SITE UP・2005.07.24 ©森本 樹

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