| [47] 越川 釈放 |
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計画は成功した、かに見えたが 思わぬ落とし穴が待っていた。 「やばい! 後輪タイヤがやられたっ!!」 囮として後ろを走っていた 北条と平尾の乗る車が タイヤを撃たれ、走行不能になったのだ。 「何やってんだよ、莫迦ッ!」 「逃げるしかない!」 「足でかっ?!」 「しかないでしょ! 早くっ!!」 「…ったくっ!!」 二人は車を捨て、勢いよく飛び出した。 転がるように坂を駆け下り、 とにかく我武者羅に逃げた。 後ろからは警官が追ってくる。 北条は塀を攀じ登り、身を隠したが 平尾は其処まで辿り着けなかった。 警官の足が思ったよりも速かったのだ。 「ま、参った! 降参、降参!!」 松田との約束通り、 平尾を素直に白旗を揚げた。 塀の向こうでは気配が無い。 北条もまた松田の言葉通り 平尾を捨てて逃げた。 それを覚悟しての囮だった。 時間を稼ぐ事。 それが二人の目的だったのだから。 大門の元に平尾が逮捕されたと言う報が入ったのは それから間もなくだった。 「一兵の奴…」 谷の言葉に項垂れる咲樹。 「谷さん、本庁に行って来ます。 一兵の身柄引き渡しと…」 「越川の件ですな。 解りました」 大門にとって吉と出るのか凶と出るのか。 それは誰にも判らない。 ただ、大門は本庁の狙いが知りたかった。 何も動けないのは嫌だった。 若手が自分の為に身を賭けたのに、 自分だけが何も出来ないのがもどかしかった。 「リキ…」 爽やかに微笑む松田の顔が脳裏を過ぎった。 「莫迦野郎…」 悪態を吐いた。 自分を思って危険を冒した 最愛の右腕に。 「莫迦だ、お前達は…」 泣きたくなった。 一人だったら泣いてしまうかも知れない。 彼等の必死の思いが伝わってくる。 『団長…』 松田の声が、脳裏を掠めた。 優しい、声だった。 「リキ…。皆……」 大門は静かに本庁へと向かって行った。 「君が命じたというのか?!」 本庁刑事部長の島貫が叫ぶ。 「はい」 「本当かね?」 「はい。自分が部下に命じました」 「君達西部署が行った行為は… 警察全体を愚弄した事になるのだぞ!!」 島貫の怒りは収まらない。 「お怒りはご尤もです。 如何なる責任も、負う覚悟です」 「君は…」 そう言って島貫は言葉を止めた。 歯切れの悪い止め方だった。 「…もう良い。 部下を連れて帰りたまえ」 「…解りました」 何かを隠している。 大門はそう直感した。 それが越川と どんな関係が有るのか判らないが…。 |