[48] 本庁の真意

沈黙する刑事部屋。

「済みませんでした…」
小さな声で、平尾が詫びる。

そして又沈黙。
大門は何も言わなかった。
それが、彼等には堪えた。

罵倒された方がマシだったかも知れない。
結局、大門の為にと思った事が
裏目に出てしまったのだから…。

「谷さん」
「はい?」
「自分はもう一度本庁に行って来ます。
 皆は越川の足取りを掴んでくれ」
「はい」

出て行こうとする集団の中、
大門は一人を呼び止めた。

「リキ」
「はい?」
「お前はたった今から捜査から外れろ」
「…団長?」

これから、と云う時だった。
何故…。

「解ったな」

有無を言わせない勢いがあった。
松田は…黙って頭を垂れるしかなかった。

* * * * * *

3月28日。

その日に取引が行われる。
2億ドルを用意しなければ
首都を破壊する。

「これが…」
「そうだ。脅迫状だ」

本庁の島貫は漸く重い腰を上げ、
越川逮捕までのシナリオを告げた。

「君達が越川を逮捕してくれた事は好都合だった。
 もう少しで奴等の事を吐かせられたのだが…」
「…」
「越川逮捕で奴等が動き出したのは間違いない。
 取引に応じなければ…」
「同封されたダイナマイトと時限装置。
 これが実際に使われると…」
「そう言う事だ。
 それだけは何としても防がねばならない」
「…そうでしたか」

大門は考えていた。
取引に応じるしかないだろう。
問題のダイナマイトの位置が掴めなければ。
越川は爆弾製造を行った事があるとの情報を
キャッチしている。
だから組織は越川の釈放を要求してきたのだ。

どうするべきか。
まだ、光は見えなかった。

* * * * * *

その少し前。

寂しそうに西部署を後にする松田。
後ろ姿を見つめ、仲間達は遣り切れなかった。
今回のチョンボの不始末を
松田一人に追わせたような気がしてならなかった。

「どうにかならないんですか、おやっさん?」
「これが大さんの親心なんだよ」
「親心?」
「大さんはな。
 何としてもリキを本庁に送ってやりたいと考えてる。
 これ以上奴に染みを付けさせる訳にはいかないんだ」
「でも…」

鳩村は何かを言おうとしたが
上手く言葉に出来ない。

咲樹は、大門と谷の言葉を黙って聞いていた。

『親心』

その意味が、理解出来た。
何故だろう。
何の抵抗も無く、大門の意図が解った。

ただ、守りたいのだ。
大門は、松田を。

「リキさん…」
やがて小さくなっていく松田の姿。

「さぁ、もう一分張りするぞ!」
谷の号令に、若者達はそれぞれ頷いた。

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SITE UP・2005.08.13 ©森本 樹

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