| [77] 執念 |
|---|
|
時限爆弾のタイムリミットは まだ1時間以上有った。 爆発物処理班に任せても 充分解除出来る時間だ。 北条は派出所から逃げ出した男を追っていた。 間違いなく今回の山はあの男だ。 そして… 10年前の事件も……。 『逃がすもんか。 …絶対捕まえてやる。 そして…彼女に……』 あの瞬間。 彼女の決意を 『遊び』だと言った自分。 もっと言葉を選べれば 彼女を苦しめずに済んだ筈だった。 後悔はしない。 覚悟は出来ている。 そう…自分に暗示を掛けた。 だが…。 『俺はそんなに強くない…。 虚勢を張っただけだ。 本当の、俺は……』 あの後の涙が、本当の気持ち。 後悔していた。 ずっと。 誰にも、言えないまま。 彼なりの懺悔なのだ。 この捜査も。 そして今の追跡も。 「絶対に逃がさねぇぞっ!!」 彼は叫びながら 追跡し続けていた。 「で、ジョーはっ?!」 爆弾の解体を済ませ、 無事が確保出来た派出所で 鳩村は北条の足取りを問い詰めていた。 「容疑者を追って… そのまま……」 「1人でか?」 「はい…」 「オキ……」 「取り敢えず団長に報告だ。 ジョーの足取りは……」 その時。 沖田の声を遮る様に 電話のベルがけたたましく鳴る。 「……」 巡査の表情が見る見るうちに青褪める。 「どうした?」 「…商店街で、 男性が刺されたとの通報です。 背格好から… 北条刑事ではないかと……」 「急いで救急車の手配。 頼めるな」 「はいっ!!」 「我々は現場に向かう」 沖田は手短に指示すると 車に飛び乗った。 「ハト、先行してくれ!」 「解ったっ!!」 「一兵…」 「団長に連絡入れます。 オキさん達は急いでっ!!」 沖田は力強く頷いた。 「う……」 隙が有った。 左の腹部に痛みを感じた瞬間。 咄嗟に男の腕を掴んでいた。 無我夢中で手に入れたのは シャツのカフスボタン。 そして…。 『あの引っかき傷は… そうそう治らねぇ…ぞ。 ざまぁみろ……』 深く刺さった刃物をそのままに 北条は朦朧とする意識と戦っていた。 『格好悪いよな…。 犯人…取り逃がして……』 咲樹の泣き顔が目の前に浮かぶ。 『…御免。 あと少しだったのに…。 もう少しで… 夢、叶えられたのに……』 自分に出来る最初で最後のチャンス。 それを掴めなかった苛立ちが 彼をもう一度立ち上がらせようとしている。 『このままでは… 終われない……。 終わらせるなんて… 出来ない……』 彼の意識は そこで途切れた。 |