| [7] 挑戦 |
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「それにしてもお前のチャカ」 缶珈琲を味わいながら 堀内は盛んに晴人の胸元に目をやる。 「そんなデカいの、使えんのか? それにかなり古いし…」 晴人の腕前が気になるらしいが 素直にそれを伝えないのが彼らしい。 事件で直に確認するか、それとも。 「射撃訓練場に行けば?」 「ん?」 何時の間に居たのか。 さも当然と言う感じで松山がアドバイスする。 「俺も興味が有る」 「なら決まりだな。北条!」 「…了解です」 晴人もこの流れでは仕方が無いと 覚悟を決めていたのだろう。 警察学校では通用した腕だが 彼は現場でも通用すると高を括ってはいない。 それが彼の『悪い癖』なのだが 当然本人は気が付いていないのだ。 射撃訓練場。 硝煙の臭いが充満している。 独特の雰囲気に、思わず晴人は息を飲んだ。 「早速試してもらおうか」 「早速…ですか…」 堀内は興味津々だ。 これで下手を起こそうものなら 父親はおろか、母親までもが莫迦にされかねない。 「先ずはホリからやれよ」 「ん? 何だ、意見する気か?」 「先ずはお前の腕を見せてやれば良いんじゃない? 得意なんでしょ、射撃」 「マツ、テメェ……」 松山は晴人の様子を横目で確認すると 何事も無かったかの様にイヤホンを着用した。 我関せずの姿勢は何も今に始まった事ではない。 松山には強い姿勢で臨んでも無駄なのだ。 「解ったよ、ったく…」 堀内は両手を万歳にして観念した。 自身の拳銃を取り出し、照準を構える。 ピクリとも動かず、ターゲットを凝視する。 その気迫は晴人にも強く伝わってきた。 大きな音が部屋中に響き渡る。 流石に得意と公言しているだけある。 的のほぼ真ん中に弾丸は貫通していた。 「じゃあ、次は北条だな」 「はい」 堀内の後、と云う事ならもっと緊張する筈だが 不思議な事に晴人はリラックスしていた。 先程までとは別人の様な雰囲気。 彼等の知らない晴人の姿が其処に在った。 照準を睨みつける。 その先に在るのは的ではない、犯人の姿だ。 犯人は人質を取って立て篭もろうとしている。 「ん…? 照準が胸じゃない」 変化に気が付いたのか、堀内が口を挟む。 松山も何かに気付いたらしく 堀内と晴人の表情を見比べていた。 やがて、晴人の考えが理解出来たらしく フッと微笑を浮かべた。 「確かに、いきなり胸や頭部に発砲出来ないな。 事件を想定するとなると、腕か…足か……」 晴人は一息吐くと引き金を引いた。 弾丸は寸分の狂い無く、的の右腕を打ち抜いていた。 |