| Perfect Crime・1 |
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その日は丁度非番だった。 平尾のようにナンパする術も持たず、 懐も少々寂しい。 北条は余った時間を ブラブラと町を彷徨う事に費やしていた。 そんな矢先。 「嫌ぁーーーっ!!」 絹を裂く様な女性の悲鳴。 反射的に体が動く。 女性は無理矢理 黒い車に押し込められている最中だった。 「この、止めろ!!」 北条が止めに入ろうとした瞬間、 車がエンジンを掛けた。 「逃がすか!!」 彼はそのまま車の上に飛び乗り、 追跡を開始した。 中では女性が捕らえられている。 何としてもしがみ付いたまま 目的地まで着かなければならない。 「くっそ〜、とんだ休日だ!」 北条は車の上でぼやいた。 何とか振り落とされずに目的地に着いた様だ。 北条は素早く車から降り、 彼女を助けようとするが 男達は揃って拳銃を構えている。 非番の北条に武器は無い。 丸腰では立ち向かえない。 「しまった…」 大門達に連絡する事も叶わない。 「勇敢な野郎だな、この小僧」 「小僧じゃない。俺は刑事だ」 「刑事ぁ〜?」 「その人を放せ!」 「そうはいかねぇな。 こっちも『仕事』なんだ」 チンピラは女性のこめかみに拳銃を当て、 ニヤニヤと哂っている。 何時撃つか判らない。 そんな恐怖が女性を凍りつかせる。 そして北条も動きを取る事が出来ない。 「その人を放せ。 俺が身代わりになる」 「言ったろ? これは『仕事』なんだよ。 お飯事じゃねぇんだ」 「俺だって本気だ。 冗談で言ってるんじゃない!」 「黙ってな、坊ちゃん。 女のドタマに風穴開くぜ」 「く…っ」 歯噛みをし、拳を握り締める。 何も出来ない。 それが悔しかった。 何が目的なのかも解らない。 そしてこの場所が何処なのかも。 何しろ必死に車にしがみ付いて来たのだ。 景色を見る余裕など無い。 『団長。皆…』 絶望感が心に広がる。 冷や汗が額から流れていった。 「付いて来な、坊や」 「…俺は」 「歯向かうと…解ってるよな」 「……」 北条は大人しく後を付いて行った。 選択肢はそれしかない。 悔しいが従うしかなかった。 「連れて来ました」 男の声に何かの気配を感じた。 少なくてもニ、三人は居る。 北条はどうするべきか考えあぐねていた。 先程よりもより状況は悪い。 少なくても自分一人では 彼女を無傷で助けられない。 それが更に彼を躊躇わせていた。 「おまけ付きか」 男の一人が北条を見てそう言った。 何処かで見た顔だった。 思い出せない。 『待てよ、確か…』 北条が必死に記憶の糸を 手繰り寄せている最中だった。 「うわっ!」 頭部に激痛が走る。 何度も、何度も。 その痛みで彼は気を失った。 頭部を拳銃で殴られたのだ。 額からは鮮血が流れ落ちていた。 |