| Perfect Crime・10 |
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加納 杏子。 彼女が何故殺されたのか。 もう一度その線から洗い直す事にした。 彼女がこの事件の鍵なのだ。 何か理由があって消された。 そしてその罪を犯人は 北条に被せたのだ。 「何の為に…?」 大門は煙草に火を点けた。 見えない壁の一片が 薄らと見え始めていた。 一方。 「車が?」 「あぁ、この先の埠頭で 落ちたんだよ」 「どんな車だった」 「確か…」 証言者の記憶は 北条の言う車と一致していた。 「有り難う…」 鳩村は礼を言うと 直ぐに大門に連絡を入れた。 「団長。鳩村です…」 証拠隠滅に車は処分された。 そうは考えられないか? 鳩村の中で希望が見え始めていた。 谷の方でも証言が取れた。 「確かにこの青年だったのですか?」 「えぇ、間違いありません」 北条の写真を見た 初老の女性は力強く頷いた。 「私が転びそうになったのを 助けて下さった方ですから。 忘れはしませんよ」 「で、この青年は…」 「えぇ。女性の悲鳴を聞きつけて それを止めようとなさって…。 あ、車に飛び乗られましたわ。 私、ハラハラしてその様子を…」 「時間は覚えてらっしゃいますか」 「はい。確か…」 女性の記憶は正確だった。 谷は漸く努力が報われそうだと安堵した。 そして。 加納 杏子の足取りを追っていた松田も 重要な情報を掴んでいた。 「シャブの横流し?」 「あぁ。杏子の野郎、 刑事からシャブを頂戴してたらしいぜ」 「だから前科者カードに載ってなかったのか」 「巧くシャブをくすねて 自分は一般人演じてたんだから 対したスケだよ」 「職は?」 「ホステス。もう辞めてるけどな」 「…店の名は?」 「えぇ〜と…」 情報屋は記憶を辿り、 キャバレーの店名を松田に伝えた。 「確か…刑事が入り浸ってたな。 其処の店。 今は知らないけど」 「若い刑事か?」 「いや、中年の…」 「中年?」 「そう、中年の刑事」 「…そうか。有り難う」 やはり北条ではない。 松田の中でそれだけは断定出来た。 シャブの横流しと中毒の黙殺。 そんな事が出来るのは… 警察といえども限られた役職の人間。 「まさか…」 松田はキャバレーに向かった。 確信を強める為に。 鳩村の指示で 海に沈んだ車の引き上げが始められた。 国立も現場に向かっている。 「指紋の一つでも見つけ出せれば…」 車の後ろ部分が引き上げられた。 ナンバーは北条が話した通りだった。 「やはりこの車か…」 「後は証拠だな。 ジョーの指紋と、ガイシャの遺留品。 毛髪でも出れば一発だが…」 「頼みます、ロクさん」 「任せてくれ、ハト。 私だって信じてる。 ジョーの無実を」 引き上げられる車を見ながら 二人はそう思っていた。 『北条はシロだ』と。 |