Perfect Crime・8

泥の様に疲れて眠る。
時間がコクコクと過ぎていった。

* * * * * *

「ガイシャの件は本庁が
 再調査をしてくれる様です」
鑑識の国立がそう言った。
「ジョーが犯人でない手掛かりが
 浮かべば良いんですがね」
「諦めずにやりましょう」
「そうですね。解りました」

国立は笑顔でその場を後にする。

「ガイシャ…か」

大門は被害者の女性の顔写真を見つめていた。
何処かで覚えが無いか、
それを確かめたかった。
北条とトラブルが遭った様には思えない。

何故東部署は北条がホシだと
断定出来たのだろうか?

「大さん…」
谷と松田が揃って刑事部屋に戻ってくる。
「どうですか?」
「はい…。
 残念ですが、現時点では
 ジョーのアリバイが成立しませんな」
「それとガイシャの方を当たってみたんですが…
 ジョーとの接点は見つかりません」
「…そうか」

容疑者としての証拠は有っても
被害者との接点は無い。
これが最大の謎だった。

通り魔や無差別じゃあるまいし。
ましてや北条は刑事である。
短絡的に犯行に及ぶとは思えない。

「リキ」
「はい、団長」
「ガイシャの身辺、
 もう一度洗い直してくれ」
「ガイシャの身辺、ですね。
 判りました」
「谷さんは…」
「再度、アリバイを立証できる証人を捜します」
「お願いします」

二人は慌しく刑事部屋を後にする。

「見えない壁…」

大門は一人呟いた。
見えない壁が立ちはだかっている。
彼にはそう感じた。

* * * * * *

「ん…」
「あ、ジョーさん。
 目を覚ました?」
「アコ…ちゃん?」

自分はまだ留置所に居ると思っている北条は
思わず身体を動かした。

「まだ駄目よ!
 点滴中なんだから」
「此処、は…?」
「安心して。
 警察病院の中」
「病院…」
「兄貴の奴、本庁に掛け合ったって。
 なかなかやるよね」
「団長が…」

北条は再びベッドに体を沈めた。
節々が酷く痛む。
手先、足先が痺れる。

よくこんな状態で耐えられたものだと
自分自身で驚いていた。
何時落とされるか、
気が気では無かったのは事実だ。
拘留時間が後数日延びていたら
自分は望まぬ自白をしていたかも知れない。

「事件は…どうなってる?」

北条は天井を見つめながら
そっと呟いた。
知りたかった。
捜査の行方を。
自分の未来を。

「…判らない。
 皆、頑張ってくれてるけど…」
「そうなんだ…」
「でも、皆信じてる。
 犯人はジョーさんじゃないって」
「俺…」
「何?」
「俺…自信無いんだ。
 本当に俺はシロなのかって…」
「ジョーさん…?」
「判らなくなってる…。
 自分自身でも…」

東部署での取調べの影響か。
北条は弱気な心の内を吐露した。

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SITE UP・2006.1.31 ©森本 樹

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