少年の涙・7

「親父、秋田組を解散させるよ。
 俺は緑と静かに暮らしたい。
 薫が産まれ、彼女は帰るべき家を失った。
 俺の所為だ。
 だから俺はその責任を取りたい。
 …もう、良いよな?」

秋田 惟次は病床で昇の遺言を
木暮に伝えていた。

「…秋田組は、
 ワシの代で終わりですわ。
 譲二には譲れません……」
「御老公…」
「薫…君でしたか。
 …逢いたかったですなぁ……」
「逢えますよ」

指定暴力団の組長に、では無く
寂しげな老人に対し、
木暮はそっと微笑んだ。

「必ず逢わせます。
 貴方の息子さんの忘れ形見を。
 貴方の息子さんの最愛の人と共に」
「木暮さん…」
「だから、気をしっかり持って下さい」
「…そうですな。
 まだ、この老いぼれも死ぬ訳にはいきませんな」
「その意気です」

木暮の差し伸べた手を
惟次はしっかりと握り締めた。

* * *

鳩村からの連絡で
漸く軍団は緑の居場所を突き止めた。

「ハト、時間を稼げるか?」
『…時間、ですか?』
「そうだ。
 自分達が到着するまで
 譲二の注意を引き付けるんだ」
『解りました。
 やってみます』

鳩村の返事に迷いは無い。

「秋田組の足止めは
 オキとジョーが引き受けている。
 一兵…」
「…はい」

平尾は真っ直ぐに前を見つめていた。

「約束しましたから。
 薫君に。
 必ずお母さんに逢わせるって」
「…そうだな」

大門は深みを帯びた声で
そう呟いた。

「団長、薫君は?」
「浜さんが無事を確認したら
 連れて来る手筈になっている。
 あの子も早くお母さんに会いたいだろう」

大門は、
これは浜からの提案だと付け加えた。

* * *

突然のバイクの乱入に
驚いたのは譲二だった。

胸元を探り、拳銃を探すが
その手を緑が押さえつける。

「離せ、このアマっ!」

緑は譲二に押し飛ばされ、
壁に背中を叩き付けられた。

「この悪党…っ!」

フェミニストの鳩村が
この様な行動に黙っている訳が無い。

幸いにも譲二と緑の間は
かなりの距離が開いた。

「クソ刑事ッ!!」

譲二が漸く拳銃を取り出すと
鳩村の乗るKATANAは
既に目の前に迫っていた。

「グハッ!」

バイクに跨った状態で
鳩村は譲二の腹部に蹴りをお見舞いする。
とにかく注意が緑から反れれば良い。
それが鳩村の狙いだ。

「それで終わりか、
 出来の悪い息子さんよ!」

鳩村は煽るだけ煽って
更に譲二の思考を鈍らせていった。

* * *

「物騒な格好して、
 何処へお出かけだい?
 組員総出でピクニックか?」

秋田組の事務所に乗り込んだ沖田と北条は
しっかりと組員の動きを抑えていた。

「刑事さんが何の用だよ?」
「お前等が一寸ヤバイ物を仕入れてるって
 ネタが入ったんでな。
 家宅捜査させてもらいに来たんだ」
「令状はあるのかよ?」

凄む組員に向かい
北条は無言で
顔面に拳を叩き込んだ。

「ガッ!」
「な、何しやがるっ?!」

「これが令状代わりだ。
 お前等、此処から一歩でも外に出たら
 公務執行妨害でしょっ引くからな」

凄みのある沖田の声に
組員達は震え上がった。

これで譲二のもくらみは失敗する事になる。

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SITE UP・2006.9.30 ©森本 樹

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