| 少年の涙・7 |
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「親父、秋田組を解散させるよ。 俺は緑と静かに暮らしたい。 薫が産まれ、彼女は帰るべき家を失った。 俺の所為だ。 だから俺はその責任を取りたい。 …もう、良いよな?」 秋田 惟次は病床で昇の遺言を 木暮に伝えていた。 「…秋田組は、 ワシの代で終わりですわ。 譲二には譲れません……」 「御老公…」 「薫…君でしたか。 …逢いたかったですなぁ……」 「逢えますよ」 指定暴力団の組長に、では無く 寂しげな老人に対し、 木暮はそっと微笑んだ。 「必ず逢わせます。 貴方の息子さんの忘れ形見を。 貴方の息子さんの最愛の人と共に」 「木暮さん…」 「だから、気をしっかり持って下さい」 「…そうですな。 まだ、この老いぼれも死ぬ訳にはいきませんな」 「その意気です」 木暮の差し伸べた手を 惟次はしっかりと握り締めた。 鳩村からの連絡で 漸く軍団は緑の居場所を突き止めた。 「ハト、時間を稼げるか?」 『…時間、ですか?』 「そうだ。 自分達が到着するまで 譲二の注意を引き付けるんだ」 『解りました。 やってみます』 鳩村の返事に迷いは無い。 「秋田組の足止めは オキとジョーが引き受けている。 一兵…」 「…はい」 平尾は真っ直ぐに前を見つめていた。 「約束しましたから。 薫君に。 必ずお母さんに逢わせるって」 「…そうだな」 大門は深みを帯びた声で そう呟いた。 「団長、薫君は?」 「浜さんが無事を確認したら 連れて来る手筈になっている。 あの子も早くお母さんに会いたいだろう」 大門は、 これは浜からの提案だと付け加えた。 突然のバイクの乱入に 驚いたのは譲二だった。 胸元を探り、拳銃を探すが その手を緑が押さえつける。 「離せ、このアマっ!」 緑は譲二に押し飛ばされ、 壁に背中を叩き付けられた。 「この悪党…っ!」 フェミニストの鳩村が この様な行動に黙っている訳が無い。 幸いにも譲二と緑の間は かなりの距離が開いた。 「クソ刑事ッ!!」 譲二が漸く拳銃を取り出すと 鳩村の乗るKATANAは 既に目の前に迫っていた。 「グハッ!」 バイクに跨った状態で 鳩村は譲二の腹部に蹴りをお見舞いする。 とにかく注意が緑から反れれば良い。 それが鳩村の狙いだ。 「それで終わりか、 出来の悪い息子さんよ!」 鳩村は煽るだけ煽って 更に譲二の思考を鈍らせていった。 「物騒な格好して、 何処へお出かけだい? 組員総出でピクニックか?」 秋田組の事務所に乗り込んだ沖田と北条は しっかりと組員の動きを抑えていた。 「刑事さんが何の用だよ?」 「お前等が一寸ヤバイ物を仕入れてるって ネタが入ったんでな。 家宅捜査させてもらいに来たんだ」 「令状はあるのかよ?」 凄む組員に向かい 北条は無言で 顔面に拳を叩き込んだ。 「ガッ!」 「な、何しやがるっ?!」 「これが令状代わりだ。 お前等、此処から一歩でも外に出たら 公務執行妨害でしょっ引くからな」 凄みのある沖田の声に 組員達は震え上がった。 これで譲二のもくらみは失敗する事になる。 |