| 少年の涙・6 |
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「薫君が?」 平尾は大門から彼の生い立ちを聞き、 全ての謎が解けた様な気がした。 「…秋田 昇。 自分も面識有りますよ、団長」 「そう云う事だ」 「…だから、彼女は 緑さんは……」 「譲二の行動はハトとオキに確認させている。 何か有れば連絡が入る。 その時は……」 大門の言葉は言わずとも解る。 「今度こそ…自分が守ります」 無念の死を迎えたであろう昇の為にも。 緑と薫の親子を守る。 それが、刑事である自分の使命。 「頼んだぞ、一兵」 大門はそう言うと、 力強く彼の肩を叩いた。 「ハト」 譲二の様子をサファリで確認していた沖田が 険しい顔で鳩村を呼ぶ。 「どうした?」 「譲二が動く。 …何処かに出かける様だな」 「一人でか? 何か有るな…」 「俺は団長に連絡を入れる。 ハト、お前は…」 「譲二の追跡だろう? 任せろ」 「頼む。 多分その先に緑さんが居る筈だ」 鳩村はヘルメット越しにウィンクを送り 譲二の乗る車を追跡し始めた。 その後姿を見送り、 沖田は無線を掴む。 「団長、沖田です」 町外れの廃屋。 譲二の車が其処に止まる。 鳩村はそっと後を着ける。 やはり其処には一人の女性が居た。 かなり衰弱している様だが 凛とした姿勢を崩さない。 『彼女が……』 若くして母親となり、 全てを犠牲にしても息子を選んだ女性。 『正に…聖母マリアの様だ』 譲二の声が部屋に響く。 「いい加減にしねぇか? 薫に会わせてくれるだけで良いんだよ」 「出来ません」 「何だよ? 伯父が甥に会っちゃいけねぇとでも 法律が有るのか?」 「貴方は… 貴方があの人の車に細工をして 死なせた事、私は知ってます。 お父様の遺産狙いで 今度は薫の命も奪う気でしょう?」 「それはソッチの被害妄想だろう? 証拠でも有るのか?」 「…ブレーキを調べれば、判ります。 それに薫は… 警察に保護されてます。 貴方の手の届かない所に…」 緑は姿勢を崩さなかった。 心の中は恐怖で震えていたが そんな事は億尾にも出さず。 『平尾さん…』 緑は縋る様にその名を呼んでいた。 『平尾さん、どうか薫を… あの子を守って……』 |