| 終わらない悪夢・1 |
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馴染みの串焼き屋で盛大に愚痴る先輩に 正直若手二人はげんなりしていた。 「…正直こんな事なら リキさんと宿直替われば良かったよ」 平尾は小声でそう呟きながら、 荒れる源田の様子を伺っている。 「ほら、酒! 切れてるだろうっ?!」 「何杯目ですか、それで?」 「知るか!」 「…もう出さなくても良いから」 「ジョー! 余計な口挟むな! 親父っ!!」 「本当、出さないで下さい!」 北条は忍耐が切れた様子で、 そのまま源田を羽交い絞めにすると 店外へと連れ出した。 「…お騒がせして御免ね。 これ、勘定」 「お客さん…」 「足りてる?」 「えぇ、余分に戴いてるみたいなんで 今、釣りを…」 「取っといて。迷惑料」 平尾は深々と頭を下げると 3人分の荷物を抱えて、そっと席を立った。 源田が此処まで荒れているのにも ちゃんとした理由が有った。 今回の事件を解決させるのに かなりの時間を有した訳なのだが。 その原因が源田にあったのである。 情報漏洩。 情婦を巧く利用し、源田を誘惑して 捜査情報を収集されていたのである。 この手はかなりの頻度で使われるもので、 松田自身も苦い体験を持っていた。 素人かスパイかを見抜くのは正直困難だ。 漏洩した情報も大きく捜査を混乱させるものでもなく (どうやら大門が見抜いていたらしく、情報を操作していた) 尋常な被害を被った訳では無い。 「気にするなよ」 松田は落ち込む相棒にそっと声を掛けた。 いつもなら立ち直って来る筈の源田だが 今回に限って反応が薄かった。 此処までが昨日までの出来事だ。 「どうしちゃったんですかね、ゲンちゃん?」 「…相手のお国の話が引っ掛かってるのかもなぁ」 概要を聞いただけだが、谷はそう呟いた。 女の出身は、源田と同じく九州…大分県だ。 地方から大都会に出てきた者同士。 他人には解らない『絆』が生まれてきても仕方が無い。 それを源田が感じ取ってしまったのだろう。 幾つもの思いの板挟みが、今の彼を苦しめている。 「で、ゲンはどうした?」 「そう言えば…まだ来て無いですね」 「もう一人来て無い奴が居るな。同伴か」 「えぇ、多分。 昨日送って行ってましたから」 「頼りないが、ゲンの事はジョーに任せるか」 谷はそう言うと、平尾を肩をポンと叩いた。 |