Kapitel・1-14

光源八剣士・伝説 人の章 (現代編)

「此方です、どうぞ」

瑠摩はごく自然に部屋へを案内した。
自室へ、である。

其処に緋影は同席していない。

『随分油断しているんだな。
 それとも、態とか?』

聖はその様子を黙って見つめている。

「どうしました?」
「…別に」

自分の記憶に残るあの男の転生した姿。
もしもそれに相違点が無ければ
何も問題は無いのだろうが。

『気配はあのワイバードと同じ。
 転生体なのだから当たり前か』

周囲の気配を探るが、
人のそれは感じなかった。

『人払いしていると云う事か。
 しかし、何故…?』

聖には瑠摩の考えが読めなかった。

『此処で悩んでも仕方が無い。
 試すなら、後でも出来る』

彼はそう自身を納得させ、
部屋へと入っていった。

* * * * * *

「よう」

不意に顔を出したその姿に
江淋は唖然としていた。

「…何しに来た?」
「可愛い彼女の顔を見に来たんだよ」
「今日は来てない。
 それよりお前、仕事は?」

江淋の無愛想な返事に、誠希は苦笑を浮かべる。

「今日は良いんだとよ」
「何だ、それは?」
「特別なお客様がお見えでね。
 2人だけで話がしたいと仰ってる」
「…特別な、客」

その【単語】だけで、江淋は意味を理解したらしい。

「新たな戦士、か」
「そう云う事」
「……」
「江淋?」
「もう逃れられない。
 そう云う事だな」
「…あぁ」

戦士としての意識は昔から備えていた。
だが、それを認めようとはしなかった。
誠希は、江淋をそう見ていた。

だが、いつから彼は目覚めたのだろう。
自分の知らない、【義】を司る戦士に。

「変わったな、お前」

誠希の言葉に、今度は江淋が苦笑を浮かべる。

「別に。俺は何も変わらない」
「そうか?」
「もし俺が変わったのだとしたら、
 変えたのは彼女だ」

家族に近い存在である自分達では出来なかった事。
それを難なく可能にした葵の存在。

誠希は、不思議な【縁】を感じていた。

* * * * * *

「人払い、したんですね」

聖は静かにそう呟くと部屋を見渡した。
実に飾り気の無い、シンプルな内装。

「えぇ。込み入った話も有りますし」
「先程のボディーガードも、ですか」
「…彼はボディガードではありませんよ。
 私の義弟です」
「…成程」

聖の目は先程から少しも笑っていない。
瑠摩がそれに気付く事は無い筈だが。

「良いんですか、人払いしても」
「…どう云う、意味ですか?」

「俺は貴方とは違うんでね。
 貴方の事を信用して、此処に来た訳では無い」

聖の視線が一層鋭くなった。
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