Kapitel・1-15

光源八剣士・伝説 人の章 (現代編)

「見せてもらおうか。
 転生した【戒天子】の実力」

聖の目が鋭く輝く。

「…成程」

瑠摩に取り乱す素振りは無い。
それさえも『解っていた』かの様な態度だった。

正直、聖には気に入らない。

「…余裕なんだな。
 本音を見せない。
 あの頃と、変わらない…」
「そうかな?」
「あぁ。だが、戦闘技術はどうだろう?」

聖の両手に光が宿る。
眩しいばかりに輝く、両手。

瑠摩は何も動かない。
思い出していたのだ。

【智天子】聖は
光源八剣士の中でも最も
【光】と相性が良い。
光一族の戦士でありながら
【光】に最も祝福されし男。

聖は何も言葉を発さず、
スッと両手を突き出した。

その動作に合わせて、
両手に集約していた光の粒子が
テニスボール状の塊となって
マシンガンの様に瑠摩を襲い出したのである。

「……」

この距離では一瞬。
だが、聖の目には何かが映っていた。
それを確認し、口元に笑みを浮かべる。

「そう来たか」

光の弾丸は炎に吸収されていた。
真っ白な炎の壁が
瞬時に瑠摩を守っていたのである。

「流石は【戒天子】と言った所か。
 闇一族が恐れた【業火の戦士】…」
「これで納得してもらえただろうか?」

瑠摩の声に、聖は静かに頷いた。

「金持ちの道楽。
 確かに、そう見られても
 仕方が無いかも知れない」

瑠摩自身はそれも覚悟の上だった。
静かに、彼は言葉を紡ぐ。

「どんな罵りを受けても…
 自分は、仲間を集める必要があった」
「…何故?」

「光赦菩来様との、約束なんだ」
「幸せな生活を壊してまで
 守りたい約束なのか?」
「あの方が居られなければ…
 自分は今、此処に【存在】していない」

瑠摩はそう言うと、静かに俯いた。

「自分の…意地、かも知れない」
「意地?」
「あぁ…」

それが何を意味しているのかを
聖が窺い知る事は出来ないだろう。

だが、その思いの真剣さは理解出来る。

「…協力は、惜しまないよ」

聖はそう言うと、
そっと右手を差し出した。

* * * * * *

「随分信用してるんだな」

珈琲を運んできた江淋は
そう言って誠希を見つめた。

「誰が、誰を?」
「お前が、瑠摩を。
 或いは、瑠摩が、その新たな戦士を」
「前者は、言わずとも解っている事だろう?」

誠希は珈琲を口に含むと
少し顔を顰めた。

「…苦かったか?」
「いや、違う」
「ん?」

「…俺はさ、
 瑠摩様や…緋影を信じている。
 勿論お前もだ。
 それは、【家族】だからって事もある」
「…で?」

「だが、俺はまだ
 新戦士を信じている訳じゃない」
「だろうな。
 お前の意志と云うよりは
 瑠摩の意志をお前が尊重しただけだ」
「江淋…。
 お前、解ってて聞いてるのか?」
「あぁ。勿論」
「性格が悪いぞ…」

誠希は漸く笑みを浮かべた。
強張った自分の表情を
彼自身はまだ気付いていなかったのだろう。

「瑠摩だって弱い訳じゃない。
 アイツは自分の能力を知っているから
 敢えて攻撃に転じていないだけだ」
「…そうだな」

「まぁ、アイツが戦いに転じれば…
 お前等2人の存在意義も苦しいものになるな」
「解ってるさ。
 あの方を戦わせない為だけに
 俺達が存在しているんだから。
 ワイバードの強さは…良く知っている」

誠希は再び瞳を閉じた。
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