参加する事が叶わなかった苦しみは
戦士として生易しいものではないだろう。
苦々しい思いを何とか封じながらも
瑠摩はその場所から動こうとはしなかった。
「瑠摩?」
「…皮肉なものだ。
自分は戦士として生まれ、
育って来たと云うのに」
「それは前世での事だろう?」
「今も同じだ。何ら変わらないさ」
「……」
聖は何かを言おうと一瞬口を開いたが
やがて、思い直したのか
微笑みながら口を噤んだ。
「…聖?」
「彼等もそろそろ引き上げる様だ。
我々も此処から退散するかい?」
「…そうだな」
瑠摩はそう同意すると
聖と共に瞬時に姿を消した。
一方、江淋の自室。
疲労とダメージが一番甚大だった彼を休ませ、
その隣には緋影が陣取っている。
葵は誠希が自宅まで送って行った。
「…何だ?」
ふと視線が合った瞬間、
思わず緋影が口を開いた。
「…気付いてたか?」
「…あぁ」
「やはり、そうか」
江淋はふっと苦笑を浮かべ
そのまま瞼を閉じる。
「聖…だったか。
【智天子】の悪巧みに
片棒を担がされていたみたいだな」
「江淋、それは…」
「高みの見物など…
アイツの、瑠摩の趣味じゃない。
…俺はそう思ってるから」
「確かに…そうだ…」
江淋なりに瑠摩を認め、
評価しているのだろう。
それは…良く解る。
「…有難う、江淋」
「…礼なんぞ、要らんよ」
照れ臭さを隠す為に
江淋は態とシーツで顔を覆った。
ぼんやりと夢を見ている。
紅い月の下で、自分は何故か戦っていた。
どうして戦わないといけないのか、
激しく自問自答しながら。
しかし倒れる訳には行かないから
己を信じて戦い抜くしかない。
今の己。
それは本当に【自分】なのか?
「最近 夢見が悪いんだよね」
隆臥の言葉に、彼の母親は首を傾げている。
「どんな夢?」
「起きたら忘れてるんだけど、
何故か後味の悪さだけは覚えてるんだ」
「まぁ……」
「疲れ、溜まってるのかな…?」
「そうかも知れないわよ。
少し休んだら?」
「う~ん。
まぁ、スケジュールを調整しつつ
何とかするよ」
隆臥はそう言って微笑むと
不意に視線を窓に向けた。
「葵ちゃん、最近忙しいのかしらね?」
彼の考えに気付いたのだろう。
母親がそっと呟く。
「…みたいだよ」
「残念?」
「…何が?」
「葵ちゃんに彼氏が出来ちゃって」
「……」
幼馴染だけに
いつも隣に居るのは自分の特権だと思っていた。
しかし、そう思っていたのは自分だけだったのだ。
独り善がりな想いに気付かされ、
自己嫌悪をしている。
不思議とあの2人に対して
腹が立たないのは、きっと…。
「葵ちゃん、幸せになって欲しいわね」
「嫁に出したみたいで変じゃない?」
「そうかしら?」
「…そうだよ」
隆臥は、母の優しさに感謝しながらも
思わず苦笑してしまった。