Kapitel・1-27

光源八剣士・伝説 人の章 (現代編)

『こうして自分の未来と向き合うのは
 非常に珍しい事だな』

江淋は夢の中で、エリオスと出会っていた。
同じ魂を持つ者同士が
同じ空間に存在する事は先ず有り得ない。

だが、2人はこうして向き合っている。

『江淋』
「何だ、エリオス?」
『迷いを断ち切る時が訪れた様だな』
「どう云う事だ?」
『お前の護るべき存在と、出逢った』

エリオスは静かに微笑んでいる。

『アオイ…。そう、名乗っていた。
 儚げながらも逞しき魂。
 彼女とは違う、新たな彼女…』

江淋は何も言わず、エリオスを見つめる。
エリオスも又然り。

長い沈黙の時間が流れる。

口火を切ったのは、エリオス。

『彼女は強い』
「…何故、そう言い切れる?」
『皆誤解している様だが』

複雑な笑みを浮かべ、エリオスが続ける。

『セルバールは決して弱い存在ではない。
 光源八剣士で唯一人
 武器と云う物を用いなくても
 凶悪に立ち向かえる存在。
 八剣士一、強き存在』
「エリオス…」
『彼女こそ、後継者だ』

セルバール、嘗ての仁天子。
その存在を知るエリオスが
こうしてハッキリと言い切った。

『迷っているのはお前だけだ。
 お前が迷っている内も時間は流れる。
 取り返しが付かなくなる事態に迄』
「…もう、其処まで来ているのか?」
『そうだ』
「……」

江淋は何かを思案している様だった。
それはエリオスにも解っている。

『我々は同じ魂を持ちながらも
 同じ存在に非ず』
「エリオス…」
『彼女も、他の剣士達も同様』
「…そうだな」

そうでなければ意味が無いのだ。
時代を超え、転生して来た理由そのものが。

『未来を変えて見せろ。
 定められた未来を砕いて見せろ。
 光源八剣士として』
「あぁ…、解った」

心の中で、決意が固まった。
江淋は漸く
迷いを振り切る切っ掛けを得たのだった。

* * * * * *

「海が凪いだな」

意味深な瑠摩の言葉に
聖は首を傾げている。

「何か遭ったか?」
「…いや、何となくだがな。
 流れて来たんだ」
「流れて来た?」
「今迄感じた事の無い、
 穏やかで雄大な海の気配を」

その言葉で合点が云ったらしく
聖は軽く頷いた。

「義兄弟と言っていたが」
「そうだ。
 血縁関係が全く無い訳ではないがな」
「血の成せる業、か?」
「かも知れん」

江淋の事は何故か昔から解る。
彼の感情が流れ込んでくる。

炎と海。
相反する力を持ち合わせた筈の2人。
結び付けているのは血縁か。
それとも…。

「【人を愛する想い】なのかもな…」

瑠摩はそう呟き、瞼を閉じる。

「【仁天子】に導かれた戦士。
 自分と、江淋の最大の共通点」
「……」
聖は何も言わず瑠摩を見つめる。

「今度の【仁天子】の寵愛を受けるのは…
 果たして誰なんだろうな」
「さぁ……」
「流石の【智天子】様にも解らないか」
「未来に関してはね」

瑠摩のジョークに対し、
聖も負けじと軽口を返していた。
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