Kapitel・1-4

光源八剣士・伝説 人の章 (現代編)

今日は授業も早く終わった。
葵はいつもより早い電車に乗り
家路に向かっていた。
駅を降り、改札を抜ける。

「…あれ?」

其処に居たのは江淋だった。

だが、今迄に見た事の無い
厳しい顔つきで
誰かの話を聞いている。

濃いサングラスを掛け、
深い紺色のスーツを身に着けた青年。
そして彼の傍らには
少し淡い灰色のスーツを着た
青年が立っていた。

「…知り合い、かな?
 それにしては……」

淡いスーツを着た青年の方が
葵の存在に気付いたらしい。
サングラスを掛けた青年に声を掛ける。

2人は何か挨拶を残した後、
葵に会釈をして
その場を去っていった。

* * * * * *

「何も聞かないんだな」

帰り道、
ふと江淋に言われた。

「…だって」
「ん?」
「必要な事なら…
 江淋が話してくれると思うから」
「……」
「話したくない事だって有るだろうし…。
 興味本位で聞きたくないんだ」
「葵…」

この優しさに惹かれている。
まるで【母親】を思わせる様な
彼女の心使い。

江淋はフッと笑みを浮かべた。

「アイツ等の事は…
 話しておいた方が良いな。
 多分、また会うだろうし」
「また…?」
「サングラスを掛けてた方が【鹿嶋 瑠摩】。
 隣に居たのが【橘 誠希】。
 2人共、俺の義兄弟」

「鹿嶋って…
 聞いた事有るような……」
「有るだろうな。
 奴は【鹿嶋コンチェルン】の後継者」
「!!」
「驚いた?」
「…凄く」
「だろうな」

江淋は笑みを浮かべたままだ。

先程見せた険しい表情は
何処にも無い。
穏やかで、優しい笑み。

「確かに兄弟なら
 又会うかも知れないわよね。
 …ちゃんと
 紹介してもらわないといけないかな?」
「何故?」
「えっ?」

葵は恥ずかしそうに俯いた。

「【江淋の恋人】ですって…」

江淋は一瞬、呆気に取られていたが
やがて腹を抱えて笑い出した。

「失礼ね!
 私、これでも真剣に
 考えてるのに……」
「御免、御免…」

苦笑を浮かべつつ、
江淋は必死に謝っていた。

* * * * * *

「まさか本人に会えるとは
 思わなかったな……」

瑠摩は何処か嬉しそうだった。
帰りの車中、
誠希と話が弾む。

「どうでしたか、彼女は?」
「はっきりと、ではないが
 【霊気】を感じた。
 【仁天子】セルバールに近い気だ」
「では、やはり……」
「彼女の事は
 江淋に任せた方が良いだろう」
「そうですね」
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