Kapitel・1-6

光源八剣士・伝説 人の章 (現代編)

葵と隆臥を家へ送り
江淋は静かに家路に着いた。

玄関先に誰かが居る。

「…?」

彼はそのまま
気にする素振りを見せないまま
扉を開けようとした。

「ミネザキ…コウリ、さん…ですよね?」
「誰だ?」
「貴方を『消しに』来ました」

男はニヤリと笑みを浮かべ
そのまま彼に斬り付ける。
江淋は身を躍らせ、
攻撃をかわし、大通りに避難する。
瞬時に霊気を用いて
周辺半径1kmに水の結界を張った。

「…少しは使える奴を送ってきたじゃねぇか。
 こうじゃないと…面白くない」

アスファルトから水が逆流し、
江淋の全身を包み込む。
水滴が弾け、光を帯びながら
江淋の体に馴染んでいく。

光源八剣士だけに許された技、【霊気爆発】。

彼はこの力を生まれて初めて
この戦いに於いて使用したのだ。
この時代で【護るべき者】が現れた。
だからこそ彼は
『負ける訳にはいかない』のだ。

「俺の本当の戦いは
 【今から】始まるんだ…」

江淋の持つ【義】の文字が
眩しく輝いている。
彼の思いに共鳴するかの様に。

* * * * * *

「?!」

それに気付いたのは瑠摩だった。

「水の…結界。
 それに、この霊気は……」

見えずとも、解る。

「江淋…。
 やはりお前は……」

彼を目覚めさせたのは
間違いなく葵である。
能力に目覚めて無くても、
前世の記憶が無くても、
やはり彼女は……。

「セルバール…
 【仁天子】なのだな……」

瑠摩はそっと念じる。

『誠希、緋影。葵を…護れ』

テレパシーでの念話。
瑠摩にしては
非常に珍しい事である。

『了解しました』
『雑魚は処分します』

即座に応じてくれる自分の仲間。
心から信じている義兄弟。

『頼む。江淋のバックアップは不可能だが
 彼女を守る事は可能だからな』

2人は笑っている…様だった。
暖かな感触が瑠摩を包む。

『頼んだぞ』

瑠摩の声は、明るさを取り戻していた。

* * * * * *

火花を散らしながら
激しく打ち合う剣と剣。

「…くっ!
 結界が邪魔で【妖力】が使えん…」
「今は【闇】の時間。
 だからこそ【光】が生きる」

江淋はそう言うと静かに微笑んだ。

「そもそも俺に【妖力】は通用しない。
 倒したいのなら
 俺を上回るだけの【剣戟】を駆使する事だな」
「ぬかせっ!!」
「その程度の腕では
 俺の首なんて…取れねぇよ」

江淋の大剣が蒼く輝き、唸る。
衝撃波が敵を捉える。

「ぐはぁーーーーーーーーっ!!」

衝撃波は水龍と化し、
敵を飲み込んでいった。

光に包まれ、
その存在が完全に消滅したのを確認してから
江淋は結界を解除する。

「…御節介共め」

瑠摩達の動きは、
戦いながら察していた。
彼等に感謝の念を抱きつつ、
口では天邪鬼な台詞を吐いていた。
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